魚住りえアナが教える、声と印象をぐんと良くする方法 ―声は「洋服のようなもの」
公開日:2016/2/29
ニュース番組にバラエティ、そしてイベントでの司会者など、数々のシーンで活躍するアナウンサー。超難関といわれる採用試験を突破しただけあって、メディアで見かけるアナウンサーの、教養と品の良さ、そして綺麗な声には誰もが憧れるのではないだろうか。
好印象な話し方や聞き取りやすい声は、恋愛や仕事においても、あればもちろん武器になる。その力が仕事や人間関係の結果を左右すると言っても過言ではない。それでも、「スピーチ」を仕事にでもしていない限り、その力を磨こうとする人は多くないのはなぜだろうか。
アナウンサーたちの技術や魅力が、才能と、そして血の滲むような努力の末に磨かれた賜物であることは想像にたやすい。私たちは、「スピーチの力」を取得するまでにかかる時間やコストを、ましてや「自分ごと」としては、なかなか想像できないものだ。
しかし、自分の憧れる話し方や、好印象、そして綺麗な声までを、「誰でも」、しかも「たった1日で」手に入れる方法があるというならば、ぜひやってみたいと感じるのではないだろうか。
今回紹介するのは、そんな待望のメソッド本、『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』(魚住りえ/東洋経済新報社)である。販売3カ月で10万部を売り上げるヒット作となっている。
本書では、魚住アナウンサーが20年を超えるキャリアの中で培ってきたメソッドを、「声」「話し方」「会話のコツ」の3つを柱に、50のコツにまとめている。
人前でのスピーチ、営業トーク、プレゼンテーション、電話、就活、デート…あらゆる場で、「上手に話せない」「滑舌が悪い」「自信を持って話せない」という悩みが邪魔をする。しかし多くの人は、その原因が「自己流の話し方」にあるということに気がついていない。
私たち日本人は「声を整える練習」「話し方を磨く練習」をする機会がほとんどありません。学校でも教えてくれないし、それこそアナウンサーや俳優のような職業でもない限り、大人になっても習うことはありません。
しかし、一度出来上がってしまった「声」まで変えるなど、本当にできるのだろうか。魚住アナウンサーは、声は「洋服のようなもの」だと述べている。驚くことに魚住アナウンサー本人も、プライベートの時の声はざらざらしていてあまり好きではないというのだ。その違いはまさに、お洒落な洋服を着ているか、それともパジャマを着ているかといった違いに過ぎず、声はシチュエーションに合わせてデザインすることで「見栄えが良くなる」ものなのだという。
本書はまず、「口のまわり」をきたえる方法、自分の持つ声の中で「いい声」を見つける方法、滑舌を良くする方法といった、「声」にまつわるトレーニング方法にはじまる。
さらに続いて、冒頭の「えー」「あのー」をやめると立派に聞こえる、集中して聞いてもらいたければ少しだけ高い声でプレゼンするといった「話し方」のコツ、商談で役立つ会話術や初対面の人との会話の盛り上げ方、デートで相手の心をつかむ方法といった、シチュエーション別に紹介されている「会話のコツ」など、より具体的なメソッドが展開されている。
大人の声と話し方を手に入れる方法としての50のメソッドの中には、ハッとする気づきが多くある。さらに、アナウンサーとしての仕事での失敗談や、苦手分野への気づき、克服方法とその結果がエピソードとして添えられており、そこからは共感や納得感が生まれる。そして、スピーチレッスン初心者にもわかりやすく書かれているため、これなら自分にもできそうだと勇気付けられるところもまた、本書の持つ大きな魅力である。
「声」が変われば印象が変わり、「話し方」を変えれば人生が変わる!
もっとも避けるべきは、「内容はいいのに伝わらない」「想いがあるのに伝わらない」という悲劇。「伝えたい」「結果を出したい」という気持ちがあるなら、伝える力を磨くために、自分の声や話し方と向き合ってみることも必要なのかもしれない。人間関係、仕事、恋愛を、「伝える力」でうまく回していくための第一歩として、この一冊を手に取ってみてはいかがだろうか。
文=松尾果歩