1日15分間! ぬり絵で自律神経を整えられる? そのメカニズムとは
公開日:2016/3/1
巷では「大人のぬり絵」なるものが流行っている。書店に行けば、「大人のぬり絵」に関する本が並べられている。手に取って本を開いてみると、子どもがやるような簡単なものではなく、細かい作業を要するものが多い。つまり、その分完成度も高くなる。手間をかければかけるほど美しくなる「ぬり絵」に魅了される大人が増えたというわけだ。
そんなぬり絵ブームの中、出版されたのが『自律神経を整えるぬり絵』(小林弘幸:著、藤田有紀:イラスト/アスコム)だ。同書はただのぬり絵の本ではない。1日たった15分間、同書に描かれてある絵をぬるだけで、ストレスが解消するというのだ。気になるその内容をご紹介したい。
同書の著者は、順天堂大学医学部の小林弘幸教授だ。自律神経研究の第一人者として知られており、プロスポーツ選手やアーティストなどのパフォーマンス向上指導に関わっている。同書によると、現代人は忙しい毎日を送るようになってから、規則正しい生活を送ることが難しくなった。さらに、ストレス社会のせいで寝つきが悪くなり、規則正しい生活を送ることが余計に難しくなっているという。つまり、自律神経が乱れているというのだ。
そもそも自律神経とは何か。それは、体を活発にする「交感神経」、休息状態にする「副交感神経」、この2つのことだ。この2つの神経がバランス良く働くことで活動的な毎日が送れる。しかし、副交感神経が弱まるとイライラしがちになる。反対に、交感神経が弱まると緊張感がなくなり、怠惰になってしまう。自律神経を整えることこそが元気な毎日を送る秘訣なのだ。
小林教授は医師として、音楽やアロマテラピーなど、手軽に自律神経を整える方法を考えてきた。音楽や香りが「聞く」「嗅ぐ」などの受け身の行動なのに対し、ぬり絵は自分の手先を使う、自発的な行動だという。そのため、ぬり絵をすることで自律神経がより整えられるというわけだ。
同書では、より効果を高めるために、他のぬり絵の本とは違う工夫がされている。まず、和柄を採用している。和柄は多くの人に「懐かしい気持ち」を呼び起こさせる。この「懐かしい気持ち」が自律神経を整えると小林教授は言う。
次に、規則的なモチーフの絵だ。これによって、おのずと手の動きが一定になる。一定のリズムは、脳の視床下部というところを通じて、自律神経の中枢に働きかける。これにより、自律神経のバランスが整うのだそうだ。他にも様々な工夫が施されており、ぬり絵を続けることで効果が実感できる仕組みになっている。
ちなみに同書では、イライラしているとき、不安を感じているとき、寝る前などにぬり絵を行うと効果的としている。心が落ち着き、状況が改善されるという。
ここまで本書の概要について紹介してきたが、私も実際にぬり絵をやってみたいと思う。同書には、様々なぬり絵が用意されており、その中で個人的に気になった「金魚、水草」というぬり絵に挑戦してみたい。
今回は色鉛筆で挑戦してみる。私自身、色鉛筆を持つのは中学生以来だ。美術の時間に絵を描いた記憶がある。小林教授の言う通り、なんだか懐かしい気持ちになってきた。同書の冒頭で書かれているが、このぬり絵に特別なルールはない。好きなときに、感じるままに、楽しく自由にぬることが大事という。ただ、目の前の絵に没頭し、ひたすら色鉛筆で絵をぬりたくる作業はとても心地いい。頭の中が空っぽになる感覚だ。
1つだけ気を付けたいことがある。1回15分間を目安に無理せず行うことが、自律神経を効果的に活性化させるコツだそうだ。「まだ終わってない」と、いつまでも作業を続けていると負担になって、かえって逆効果という。もちろん、作業が楽しければ15分以上続けてもいいそうだ。
というわけで、15分間の成果をここでお見せしたい。こんな感じだ。
確かに、懐かしさと絵をぬる楽しさで心がリフレッシュできた。頭の中のもやもやもずいぶん取り除くことができた。絵心がなくても効果があるのが嬉しい。
ちなみに、後日、改めて「金魚、水草」のぬり絵に挑戦した。その完成がこちらだ。
絵心については触れないが、個人的には気に入っている。一度色をぬってしまえば完成というわけではなく、さらに色をぬってグラデーションを加えたり、クレヨンや絵の具で工夫を加えたりしていくこともできる。手を込んだ作品ができるというわけだ。
絵の才能がないために、絵を描くということから一切距離を置いてきた私だが、同書に挑戦してみて、ぬり絵にハマる大人たちの気持ちが分かった気がする。自律神経の乱れを感じていて、かつ、ぬり絵に挑戦してみたいなと考えている大人にオススメしたい。
文=いのうえゆきひろ