【ダ・ヴィンチ2016年5月号】Cover Modelは、大泉 洋さん!

Cover Model 紹介

公開日:2016/4/6

【ダ・ヴィンチ2016年5月号】Cover Modelは、大泉 洋さん!

Cover Model 大泉 洋
 


〝つらい〞気持ちを起こすこと
それもまた作品のエネルギー

 

「おーし!いきますか!」

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 2階の控室からその声が響いてきた途端、スタジオ内がほんわりと温かみを増した。撮影、取材の準備をしていた誰もが、なんとも言えない柔らかな表情となり、階段を下りてくるその男を待ち構えている。

〝この人を見ていたいなぁ〞という気持ちにさせてくれるのだ、大泉洋という人は。舞台でも、映画でも、ドラマでも。そして毎回、〝今度はこう来たか!〞という新しい魅力が繰り出されてくるのだからたまらない。この1月には、映画『駆込み女と駆出し男』でブルーリボン賞・主演男優賞も受賞!

 まさに脂の乗り切った……だが大泉さん、今日はちょっと沈痛な面持ちである。

「もうつらくてね。読み進めるの、なかなかたいへんな本でした」

 手にしているのは、昨年、25年ぶりに新装版が再刊されて以来、注目を集めている『親なるもの 断崖』。舞台は開拓が進む〝鉄の街〞、昭和初期の北海道室蘭。そこに実在した幕西遊郭へと売られてきた4人の少女たちの壮絶な生の物語だ。

「〝描きたい〞という作者の凄まじいエネルギーを感じました。あまりにつらすぎて、ここまで描くことができない作家さんだっていると思うんですよ。それをこの方は真っ向から描いた。そしてまた、〝どうしようもなくつらい〞という気持ちを人に起こすことも、作品が持つ大きなエネルギーだと感じましたね」

 

■そんな大泉洋さんの選んだ一冊は……

mirai

『新装版 親なるもの 断崖』 曽根富美子 宙出版 第1部980円、第2部920円(いずれも税別)

 昭和2年、断崖絶壁に囲まれた北海道室蘭の幕西遊郭に4人の少女が売られてきた。松恵16歳、お梅11歳、武子13歳、道子11歳。女郎に、芸妓見習いに、下働きに──どの道に分け入ってもここは奈落の底。昭和33年まで実在した遊郭を舞台に、哀しく生きる女たちの姿が描かれる。第2部ではお梅の娘・道生を主人公に、戦時中の人間ドラマが活写される。

取材・文=河村道子