プロが教える、ルールがわからなくてもフィギュアスケートを楽しむ方法

スポーツ

更新日:2016/3/3


『プロのフィギュア観戦術』(鈴木明子/PHP研究所)

 シーズン真っ只中のフィギュアスケート。

 素敵な衣装を着て華麗にスケートリンクを滑る選手の姿に思わず見とれてしまう一方、細かなルールや、ジャンプ、スピンなどの技を覚えるのは難しいと思っている人も多いのではないだろうか。

 フィギュアスケートは好きだけど、ルールはわからないという初心者ファンにオススメしたい本が、元日本代表で現在はプロフィギュアスケーターとなった鈴木明子さんの著書『プロのフィギュア観戦術』(PHP研究所)だ。

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 タイトルは観戦術となっているが試合だけではなく、それ以外でもフィギュアスケートを知ることにより、フィギュアスケート自体をもっと好きになってもらおうという趣旨で、さまざまな知識について書かれている。

 まず、本書で書かれるのは「会場に行って観戦してほしい」ということだ。

 もちろん、テレビで観戦すればルール解説もあり、演技直前・直後の選手の状況もよくわかる。しかし、鈴木さんは「大会の開始からずっと会場にいると、テレビではわからないさまざまな発見がある」と言う。

 現地ではテレビと違い、後半グループで滑る成績の良いトップ選手以外の成績が振るわない選手、発展途上の選手の演技もゆっくりと観戦することができる。それにより、お気に入りの若手選手を見つけたり、トップ選手の良さが更に感じられたりもする。

 他にも、放送されることのない少ない前半グループの6分間練習と、トップ選手の滑る後半グループの6分間練習とを見比べることにより、選手の動き、ジャンプから着氷するときの音の鋭さ、ジャンプに入るまでのスピード感などの違いを感じることができ新たな発見に繋がる。

 この6分間練習はトップ選手でもテレビ中継において全て観ることはできず、注目選手ばかりが映しだされることも多い。しかし、会場でじっくりと観戦することで、ジャンプの体勢に入っているのに飛ぶのをやめる選手や、絶好調に見えても練習後のコーチとの会話中に不安げな表情を見せている選手などが目につく。そんな彼らの調子の悪さなど、テレビではわからない情報も得られる。

 しかし、トップ選手が出ている試合はチケットが高い(アリーナ席だと1万数千円する場合も)、家の近くで主要大会が行われていないなどの理由で観戦できないことも多い。そういった人にオススメなのが地方大会の観戦だ。

 日本人のチャンピオンを決めるのは全日本選手権だが、その前には関西や中部など各ブロックの予選、東日本大会、西日本大会などの予選が行われる。予選免除で全日本選手権に出場できるのは一定の条件を満たす選手のみのため、予選参加者は多く、トップ選手の出場も珍しくはない。

 また、選手にとっても地方大会での応援は嬉しいもの。鈴木さんも本書で、子どもの頃の小さな大会で受けた少しだけの拍手が29歳の現役引退にまで繋がったと書いている。

 本書では、他にもソチオリンピックの裏側や、鈴木選手から観た選手の強みや弱みなどの情報もたっぷり書かれており、初心者向けのわかりやすい本ながら上級者にも十分に楽しめる。

 グランプリシリーズ、グランプリファイナル、全日本フィギュアなども終わり、シーズンも終盤に差し掛かって来たフィギュアスケート。3月からはじまる世界フィギュアを前に、ぜひ本書を手にとってみてはいかがだろうか。

文=舟崎泉美