年齢とともに、様々な病気のリスクが増えてくる。病気と言われて、一番初めに「ガン」という文字が頭に浮かぶ人も多いだろう。日本人の三大死である「ガン」「心臓病」「脳卒中」の1つであり、人類共通の敵なのだ。そして、それ以外にも気をつけねばならない病気がある。それが糖尿病だ。しかし、『糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて』（山田 悟/幻冬舎）によると、日本人の6人に1人が、40歳以上では3人に1人が、血糖異常であるというのだ。

　血糖異常というのは、言わば、糖尿病の予備軍である。糖尿病とは、インスリンホルモンの働きが悪くなり、血液中のブドウ糖の値、つまり、血糖値が異常に高くなってしまう病気のことだ。糖尿病の一番怖いところは、糖尿病が原因で発症する合併症である。血糖値が高くなることで細小血管が傷つけられ、腎臓、目、神経に障害が起きてくる。ひどい場合では、腎症で人工透析に通ったり、網膜症で失明したり、神経障害で尿失禁が起きたりするのだ。これらを糖尿病の三大合併症と呼んでいる。

　それだけではない。糖尿病の結果、動脈硬化症が引き起こされるリスクも高まる。動脈硬化症が進むと、冠動脈疾患という血管障害が起き、先ほどの「心臓病」「脳卒中」にたどりつく。

　さらに、ガン細胞はブドウ糖をエネルギー源にして生きている。そのため、高血糖状態の体ではエネルギー源を取り込みやすく、増殖しやすいと考えられている。実際、大腸ガン、肝臓ガン、すい臓ガンは、糖尿病患者と普通の人を比べて、1.8倍から1.9倍も高くなるデータが出ている。

　このことより、日本人の三大死を防ぐためには、まず糖尿病を防ぐ必要があると言えるのだ。しかし、現に日本人の6人に1人が、40歳以上では3人に1人が、血糖異常である。血糖異常が起こるのは、日々の不摂生による生活習慣病が原因だ。運動不足と不健康な食事のせいだ。しかし、運動不足は忙しい現代人にとってなかなか解決しがたい問題でもある。そこで同書で提案しているのが、「ロカボ」という食事法だ。食事は毎日必ずやってくる。不摂生な食事を解決できれば、生活習慣病も防げ、血糖異常も起こりにくいというわけだ。

「ロカボ」とは、「ローカーボハイドレート」の略だ。本書にその定義が書かれてある。

糖質を1食20～40グラム、それとは別に1日10グラムまでのスイーツ、間食を食べて1日の糖質摂取量をトータル70～130グラムにしましょう、というのが「ロカボ」の定義です。

　このことから分かるように「ロカボ食」とは、カロリーを抑えるのではなく、血糖値を上げる直接の原因である糖質を抑えようという食事法だ。日本人は平均して1日に270～300グラムの糖質を食べているので、その半分程度に抑えるという。

　ロカボ食の実践方法を簡単に紹介していこう。まず、主食のお米だ。私たちが食べているお茶碗一杯盛りがおよそ150グラム。ロカボ食では、お米の量はその半分である70グラムにしてほしいという。ちなみに食パンに置き換えると、6枚切りの1枚分を目安にするといい。パンや麺類をメインに食べるという方は、食品メーカーから販売されている「低糖質」商品を購入すれば、ロカボ食が定義する数字を実践できるという。

　次におかずについてだが、ロカボ食では、たんぱく質や脂質については気にしなくていいとしている。肉、魚、豆腐などの大豆製品、野菜は積極的に食べる食品としているのだ。

　しかし、野菜について気をつけるべき点があるという。それが、野菜と同じカテゴリーにされがちな果物だ。果物は多くの糖質を含んでいる。さらに、最近ではフルーツトマトといった甘い野菜が増えている。これらはロカボ食には適さないのだ。

　著者はロカボの定義に従った研究結果を論文にして発表している。被験者を、カロリー制限食を取るように指導したグループと、ロカボ食を取るように指導した2つのグループに分け、比較した研究だ。それによると、カロリー制限食では血糖値の改善は見られなかったが、ロカボ食では、血糖値、さらに中性脂肪の改善もされていたという。このことから、糖尿病を防ぐにはロカボ食は有効であることが分かる。

　ちなみに、ロカボ食を実践する上で、カロリーを気にする必要はあるのかと疑問に思う方もいるだろう。しかし本書では、最近の研究結果によると血糖異常を防ぐにあたってカロリーを制限する必要はないと書かれており、その理由について非常に詳しく、そして細かく記述されている。気になる方はぜひ本書を読んでほしい。つまりロカボ食では、糖質さえ気にしていれば、カロリーを一切気にしなくてもいいのだ。

　健康とは、食事とは、毎日の積み重ねである。その積み重ねが歪み始めると、将来の自分自身が大きく揺らぎ始める。健康や食事にちょっとでも後ろめたいところがある人は、これを機に「ロカボ」を始めてみるといいかもしれない。

文＝いのうえゆきひろ