性病に罹るリスクよりぬくもりが欲しい。男が男にカラダを売る、「ウリ専」という仕事のリアル【ゲイの”本”音③】
更新日:2020/5/11
「ウリ専」という職業のことを知っているだろうか? これは、端的に言うと、ゲイ向けの風俗産業のこと。つまり、男が男にカラダを売る仕事のことだ。そんな職業に従事する男の子たちに迫った一冊がある。『ウリ専!』(松倉すみ歩/英知出版)。本書には7人のボーイたちが登場し、その生き様が徹底的に掘り下げられている。
始めに登場する テッペイは、パチスロで作った借金を返済するためにウリ専の世界へ足を踏み入れたという。バイセクシュアルでもともと男性とセックスすることに抵抗がなかった彼は、あるきっかけ でウリ専として働くことになった。日給3万円も夢じゃない。こんな甘い言葉に誘われて、気づけば引き返せないところまで来てしまったのだ。しかし持ち前の潔さを発揮し、次々と客をこなしていった。ソフトSMや3Pなど、アブノーマルなことも経験した。しかし、それらを踏まえた上で一番打ちのめされたのは、“研修”と称して店のマネージャーとセックスしたときだったという。「青春が終わったって感じ」という彼の言葉は、それ以上の重みを伴っているような気がしてならない。
かと思えば、テッペイとは真逆に終始ウリ専そのものを楽しんでいるボーイもいるそうだ。元ゲイ向けAVモデルだったマコトは、店側から懇願されて働くようになった。けれど、それは願ったり叶ったり。なぜなら彼はセックスが大好きなのだ。マコト曰く、「ウリ専は変態がいっぱいで最高」とのこと。要するに天職だったということだろう。
その他の面々も、ウリ専に従事した理由はさまざま。昼間の仕事で稼げない分を補填するため、作曲家という夢を叶えるコネを作るため、起業に向けた情報収集のため……。どうしてそんな理由で? とも思うかもしれないが、彼らの選択に対して文句を言う権利は、誰にもない。
なにより、ボーイの多くは、ウリ専で働いていたことを後悔しない。むしろ積極的に肯定しようとするという。「自分が社会でどれほどのものかがダイレクトにわかる」「なんだって、知らないよりも知っていた方がいい」「体を使ってお金を稼ぐのは、サラリーマンも一緒」。彼らのリアルな声は、読み手の常識をガラガラと崩してしまうかもしれない。