更年期障害、薄毛問題…性別が「?」な人たちが歳をとったらどうなるの?

暮らし

公開日:2016/4/4


『「性別が、ない!」人たちの保健体育』(新井祥/ぶんか社)

 更年期障害、薄毛問題、アンチエイジング…。加齢とともにあらわれる体の変化は男女を問わず悩みのタネだが、セクシュアルマイノリティー(性的少数派)の人たちはどうしているのだろうか?

「性別が、ない!」人たちの保健体育』(新井祥/ぶんか社)は、そんな疑問に直面したインターセックス(男と女の中間の性)の著者が、読者からの質問に自身の体験談を交えて、ざっくばらんに答える4コマコミックエッセイだ。

 日本のメディアではオネエやニューハーフなど、一部のセクシュアルマイノリティーの人たちを目にすることはよくある。しかし、著者のようなインターセックスの人については長い間、目をふせられてきたと著者は指摘する。そのため、インターセックスの人たちが「老い」とどう向き合うのかに関する情報は、圧倒的に不足していると著者は記している。

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 女性として生まれ育ってきたが、ホルモンバランスの変化によって男らしくなったり、女らしくなったりという生活を送ってきた著者。染色体検査でインターセックスと判明し、30歳で縮胸手術を受けて、ホルモン治療を行い、外見は男性、戸籍上は女性という、中性作家として活動している。詳しくは著者の作品『性別が、ない!~両性具有の物語~(ぶんか社コミックス)』(ぶんか社)全15巻で語られている。

ホルモン変化と更年期

 ホルモン治療を始めて12年目の著者は、40歳を過ぎてヒゲや体毛が濃くなった一方で抜け毛が気になり、ホルモン注射を怠っていたところ不整脈で倒れてしまう。

 ホルモン不足による更年期障害の症状だが、見た目は男性、カルテは女性でちょっとした騒ぎになり、改めてホルモン治療の大切さを実感しているそうだ。

 その他にも、陰毛に交じる白髪の考察やホルモン治療による体質の変化など、加齢とホルモンのバランスが体に及ぼす影響について、著者自身の体験をもとに語っている。

婦人科が苦手

 子宮はあるが、ホルモン治療を受けて10年ほど生理は止まっているのに、不正出血があったというFtM(男性に性転換した女性)の読者から相談を受け、著者自ら婦人科に子宮頸がんの検診を受けに行く話である。外見も男性らしくなっているので、婦人科には行きにくいという相談者。女性でも婦人科検診は苦手という人も少なくないだろう。

 本書では著者の女性時代の経験や検診を受ける緊張感が面白おかしく描かれており、不思議と安心させられる。

 外見と戸籍の性が異なる人は事前に病院に説明しておくことで、スムーズに検診を受けることができるそうだ。最近は診療時間外に検診をしてくれるなどの配慮をしてくれる病院も増えているという。

 その他にも、アンチエイジングのためにプラセンタ注射を打ったり、漢方薬を試したり…。レズビアン作家・竹内佐千子とセクシュアルマイノリティーの現実をゆるく真面目に語った対談『「老い」と「セクマイ」と私』も収録されている。

 誰にでも平等に訪れる老い。人には恥ずかしくて相談できないことも、ちょっと深刻になってしまいそうなことも笑いに変えて明け透けに描かれているので、気軽に読んでみてほしい。

文=鋼 みね