奇跡のコラボレーション『探偵の鑑定』(I・ll)刊行記念 松岡圭祐スペシャル
公開日:2016/4/6
現代のエンタメ小説を代表する2大ヒロインミステリー
タイプの異なるヒロインが活躍する「万能鑑定士Q」と「探偵の探偵」。ここではその特色をおさらいしておこう。
凜田莉子は東京・飯田橋にて鑑定業を営んでいる23歳。コインからサブカルグッズ、宝石や名画まで、あらゆる分野に通じた“万能鑑定士”だ。ヒロインとしての莉子がユニークなのは、こうした知識を努力して身につけた点だろう。
高校までの莉子は周囲に心配されるほどの劣等生。あてもなく沖縄の波照間島から上京して、リサイクルショップで働き始めた。そんな彼女の才能に気づいた経営者の瀬戸内陸は、論理的なものの考え方、勉強の仕方を伝授。みるみる鑑定士としての才能を開花させていった莉子は、20歳で独立し「万能鑑定士Q」をオープンさせたのだった。
言動はキュートながら、頭脳は明晰で博覧強記。いつも鑑定に同行する『週刊角川』の編集者・小笠原悠斗とのピュアな恋の行方も大きな魅力のシリーズ。これまで20巻が刊行されており(スピンオフ「特等添乗員αの難事件」も加えると25巻)、2014年には綾瀬はるか主演で映画化もされている。
対する「探偵の探偵」の紗崎玲奈は、人前では笑うことのない孤独な探偵だ。高校卒業と同時に探偵学校・スマPIスクールの門を叩いた彼女には、最愛の妹をストーカーに殺されたという辛い過去があった。調査会社スマ・リサーチを率いる須磨康臣から直々に手ほどきを受けた玲奈は、“対探偵課探偵”となり、探偵という地位を利用して悪事を働く者たちの罪を暴いてゆく。
この作品が扱っているのは、職業としてのリアルな探偵像だ。尾行の仕方、身の守り方、個人情報の探り方など、膨大なディテールとともに描かれる探偵の日常は、きれい事とは一切無縁。玲奈自身も、目的のためには法を破ることもいとわない。これまでのミステリーで描かれた探偵とは、ひと味もふた味も違うリアリティが衝撃だった。
これまで刊行されたシリーズは4作。15年には北川景子主演でドラマ化されたので、ご存じの方も多いだろう。傷だらけになりながら、悪徳探偵を追いつめる玲奈の姿は最高にクール。彼女の孤独と哀しみが癒やされる日が訪れるのを、ファンは願っている。
どちらも現代のエンタメ小説を語るうえでは欠かせない、ヒロイン・ミステリーの傑作だ。
薄汚れた探偵たちの世界を描く、ハードボイルド・アクション
「探偵の探偵」シリーズ
妹の復讐を果たすため、悪徳探偵を狩るクールビューティー
「探偵の探偵」
紗崎玲奈(22)
妹・咲良をストーカーに殺された過去をもつ。妹の居場所を犯人に教えたのが探偵だったことから、悪徳探偵を敵と思っている。スマ・リサーチ社の須磨から探偵技術の手ほどきを受け「探偵の探偵」として同業者との戦いに身を投じる。
知的好奇心を刺激する“人の死なない”ミステリー
「万能鑑定士Q」シリーズ
まっすぐで優しい心を持った、凄腕鑑定士
「万能鑑定士Q」
凛田莉子(23)
沖縄県波照間島出身。高校時代は劣等生だったが、上京後働き始めたリサイクルショップの店主に学習法を伝授され、ロジカル・シンキング(論理的思考)の才能を開花させた。20歳で独立し「万能鑑定士Q」を開業。感受性豊かで涙もろい一面も。
旅の楽しさとミステリアスな事件が融合した娯楽作
「特務添乗員a」シリーズ
旅のトラブルは“閃きの小悪魔”にお任せを
「特等添乗員aの難事件」
浅倉絢奈(22)
ツアーコンダクター。ニートな生活を送っていたが、ラテラル・シンキング(水平思考)の才能を開花させ、添乗員資格の取得に成功。凡人にない発想で旅先のトラブルから難事件まで鮮やかに解決する。凜田莉子とは友人関係。