売れるセールストークのキモとは?─営業デビューでつまずく前に
公開日:2016/5/5
営業マンが現場でお客さんと、接する際の武器は「会話」です。書店には「話し方」に関する本がたくさんあり、「人を引き付ける話し方」「説得力のある話し方」など様々なテーマの本が営業マン向けに書かれています。しかし話し方を工夫しても、なぜかお客さんとの会話がしっくりいかない時はありませんか?それは、ある大事なプロセスが抜けているからなのです……。
「合意のとり方」>「話し方」
実は話し方よりも、もっと優先されるべきことは〔合意〕というプロセスです。「合意ってどういうこと?そんなの会話をしているんだから、合意のうえでしょう」と不思議に思われるかもしれません。しかし、実際には〔合意〕をとりつけないまま、話を進めてしまっているため、会話がうまく進まないことがあります。
といっても、なかなかイメージしにくい〔合意〕のプロセス。『最高の営業デビュー』(佐藤昌弘著)から自動車ディーラーの営業を例に見てみましょう。
お客さん:「CMで観た、○○という車はこちらですか?」
営 業:「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。私は営業鈴木と申します。こちらは最新フルモデルチェンジをした○○です。燃費もこれまでよりもさらに良くなり、内装も良くなりました。カラーバリエーションもたくさんあります。また、オプションでカーナビも最新のものにすることができます。よろしかったら試乗もできますよ」
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どうでしょうか?お客さんに問われた車について詳しく説明し、試乗の提案もおこない、丁寧に接客しています。しかし、これは〔合意〕のとれていない例です。どこに問題があるのでしょうか?〔合意〕のプロセスが入った会話を見てみましょう。
お客さん:「CMで観た、○○という車はこちらですか?」
営 業:「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。本日担当させていただく、私は営業の鈴木と申します。よろしくお願いします。
まずは、ざっとご覧いただきましょうか?それとも前のモデルとの違いなどをご説明いたしましょうか?
もしよろしければ、そのあとでも良いので、今乗っていらっしゃるお車のこととか、少し簡単にお話しをうかがわせていただきたいのですが。そのような順番でお話を進めさせていただいて、よろしいでしょうか?」
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いかがでしょう?会話を進めるにあたり、どの方向に話を進めていくのか、お客さんに一つずつ確認していますね。
〔合意〕を重視することによって、お客さんが関心を持ち、情報収集しようとしている段階なのか、それとも比較と判断をしている段階なのかを見極めることができます。また、お客さんの反応によって警戒度も知ることができます。
「合意」+営業の会話5つのステップ
では、〔合意〕をうまくとるにはどういったステップを踏むと良いのでしょうか?佐藤氏は以下の5つの手順で進めていくと、やりやすいと説明しています。
本題に入る前に〔合意〕をとることで、その後の会話の流れがスムーズになります。また、大切なのはあいまいな合意ではなく、お客さん自らが納得したうえでの明確な合意を目指すことです。それによって、お客さんが知りたい情報と、営業マンの伝えたい話が一致し、一方通行にならない会話をすることができるのです。
〔合意〕と〔引き際〕の関係
もし、〔合意〕をとりつける段階で、お客さんが「見たいだけなんで……」と抵抗を示したり、口ごもったりする場合は〔合意〕はとれていないとみるべきだと、佐藤氏は述べています。そんな時はお客さん自身の考えがまとまっておらず、無理にプロセスを続けようとすると、さらに強く抵抗されることになってしまいます。段階をきちんと見極め、〔引き際〕を判断することも、会話の中では大切なことです。
以上、話し方よりも大事な〔合意〕の話でした。話し方を磨くことも大事ですが、〔合意〕のプロセスを意識し実行することで、スムーズに購買行動のゴールまでもっていけるようになります。なにより、お客さんが納得して会話を進めてくれるのは、営業マンとしても安心ですよね。ぜひ、会話の中に取り入れてはいかがでしょうか。
文=日本実業出版社