『少年アシベ』が新装版で復活! 愛らしいゴマちゃんとアシベの日常を描く
更新日:2017/6/4
“ゴマちゃん”って知ってる? 愛らしいゴマちゃんとアシベの日常を描く、『少年アシベ』が新装版で復活!
約28年前、その愛らしさで一世を風靡したゴマフアザラシのゴマちゃん。どこの水族館にいたのかって? いやいや、ゴマちゃんはマンガ『少年アシベ』に登場し、世の少年少女を魅了したキャラクターなのだ。そのゴマちゃんが、なんと帰ってくることに! この4月からアニメ「少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん」として、NHKにて放送されている。そして、それを記念して、新装版『少年アシベ』(森下裕美/双葉社)が連続刊行されることが決定した。さて、それでは、「懐かしい!」という人にも、「ゴマちゃん、はじめまして」の人にも、本作の魅力を解説してみようと思う。
本作は小学生・芦屋アシベとペットのゴマちゃんとの日常をコミカルに描いた作品。しかし、物語は時にその周辺人物の描写へも波及し、多種多様なキャラクターの織り成す群像劇形式となっている。そして、その個性豊かなキャラクターたちが、本作の魅力のひとつ。どのキャラクターも、いつ主人公の座を奪ってもおかしくないくらい濃ゆいのだ。
アシベは大工の父ちゃんと主婦の母ちゃんと3人でアパート暮らしをしている。そこへやってきたのがゴマちゃん。しかし、その出会いは結構衝撃的なもの。ある日、トラックの荷台から落ちてきたゴマちゃんを拾ったアシベは、「早く食おうぜ!」と父ちゃんに提案する。けれど、魚ではないから食べられないとなだめられ、結局ペットとして飼うことに。なんとも言えない空気感の中、少年とアザラシは出会ったのだ。
アシベの両親も、これまたキャラが濃い。父ちゃんは大工という仕事を活かし、なんと無断でアパートを改築してしまうのだ。しかも、最初はベランダを増築するレベルだったものの、最終的にはラブホテルと間違われるほど派手な装飾を施す始末。もはや大家さんも頭を抱えてしまうのは当然だろう。また、母ちゃんはそれを止めるでもなく、ただニコニコと見守るだけだから手に負えない。なんて自由な一家だろうか。
そんな父ちゃんの父親(アシベのお祖父ちゃん)は、芦屋商事の社長を務める大金持ち。庭にプールを所有し、そこでゴマちゃんを泳がせてあげるなど、遊び方がバブルそのもの。しかも、暴走族とつるむのが好きという、破天荒な一面も持っている。
アシベの家族以外の面々も、ユニークな人たちばかり。女優の母親を持つゆうまくん、事故に遭ってもしばらく痛みを感じないほどぼんやりしているまおちゃん、いじめっ子の坂田兄弟、そしてアシベが大好きで仕方ない親友のスガオくん。中華料理屋で働くリャンリャンに、犬そっくりなリャンリャンの父・ワンさん。老け顔を気にする南先生に色気ムンムンの安西先生、筋肉美を誇るナルシスト・天堂先生。……と、ここには書ききれないほどのキャラクターが登場し、物語に色を添える。
前述の通り、メインとなるのはアシベとゴマちゃんの日常生活。けれど、それ以外のキャラクターもいきいきと描かれており、ページの中には独特のアシベワールドが広がっている。きっと、「こんな人たちが周りにいたら楽しそうだなぁ」と思うだろう(そして、実際にいたら大変かも……とも思うはず)。
また、書籍版はアニメとは異なり、少しだけブラックなギャグが見受けられる。それも本作の魅力なので、アニメを見て興味を持った人は、ぜひ書籍版も手にとってみてほしい。ほんわかした雰囲気の中にちょっとしたスパイスが感じられ、きっとハマってしまうことだろう。もちろん、ゴマちゃんの可愛らしさはアニメでも書籍でも変わらないので、ご心配なく!
文=五十嵐 大