母の日間近、母という存在について改めて考えさせられる絵本
公開日:2016/4/28
来る5月8日は母の日。一緒に旅行へ、食事をごちそうする、何かプレゼントする…など、感謝の表し方は人それぞれだろう。思いをかたちにして伝えるのもいいけれど、今年は改めて母親とはどういう存在なのか…? 『ちいさなあなたへ』(文:アリスン・マギー、絵:ピーターレイノルズ、訳:なかがわちひろ/主婦の友社刊)で、母親について考えてみるのはいかがだろうか。
「あのひ、わたしは あなたの ちいさな ゆびを かぞえ、その いっぽん いっぽんに キスを した」との一文からはじまり、母であることのすべてがつまった本書。2007年にアメリカで発売されると、NYタイムズやamazon.comの児童書分野で、あのハリー・ポッターシリーズを押しのけて1位になり、多くのアメリカの母親たちを号泣させたという。そして2008年3月に日本に上陸。同年に「第1回MOE絵本屋さん大賞」総合2位、文学賞1位を受賞、8年で53万部超えと大ヒットベストセラーとなり、女優で二児の母でもある井川遥さんが帯にコメントを寄せている。
自分ひとりでは何もできなかったわが子が成長していく姿に、喜びを感じつつも、どんどん離れていってしまう寂しさも…。そんなわが子に対する母親の思いが語り口調で書かれているが、そのメッセージは実にシンプルだけれどもどこか温かく感じられる。例えば、「かなしい しらせに みみを ふさぎたくなる ひも あるだろう」というメッセージ。たった一文だけれども、子どもの悩みや苦しみをわが事のように感じ、案じてくれる母の姿が目に浮かび、「大丈夫、お母さんがついているよ」「お母さんはあなたの味方だよ」など、優しい言葉が続くのではないかと想像してしまう。
本書が大ヒットしたのは、母親はもちろん、これから母になろうとしている女性、巣立とうとしている子ども、それぞれがそれぞれの読み方ができるということが一つにある。母親の立場である女性は、絵本で登場する女性と自分を重ね合わせるだろう。未婚で子どももいない今の私にとっては、今まで母親から受けた愛情を思い出すことができ、そして私もいつかは母になり、愛情を与える側になるのだと再認識させられた。
母親ってなんだか不思議だなあとずっと思っていた。エスパーかよ!と心の中で突っ込んでしまうくらい何も言わなくてもこっちの変化に気づいてきたり、母親がかけてくる言葉は的確で、そしてなんだか安心する。でもそれは愛情があるからこそであり、きっとそれは私も将来わが子に同じことをしているのだろう。
あなたは本書を読んでどう感じるだろうか? 読み終えた後はきっと母親と話したくなる一冊、ぜひ手にとってみてほしい。