浮気調査に復縁工作…“探偵事務所”や“興信所”って、どんなところ?
公開日:2016/5/16
最近、2時間ドラマをよく見ます。特定のシリーズにハマって、というわけではなく、その時々に放映されているものを何となく見始めることが多いのですが、目まぐるしく変化する状況に引き込まれ、気付いた時には大団円を迎えていて…。複雑な殺人トリックを追っていると、本当に、2時間なんてあっという間。どんなに捜査がこじれても、最後にはちゃんと真相が暴かれるという、暗黙のルールも良いですね。登場人物の心情にのめり込みやすい自分でも、安心して観ていられる気がします。
サスペンスドラマの主人公って、多くは警察関係者だったり、やけに洞察力の高いおばちゃんだったりするのですが、たまに探偵モノに当たることがあります。古い雑居ビルの一室に事務所を構えるオジサマ、というのが相場のようですが、そういう描写を見るたびに私は、「そうか、現実の探偵さん(ドラマだけど)は、蝶ネクタイもしていなければ、じっちゃんの名にもかけないのね」なんて思ってしまいます。…これ、アラサーあるあるではないでしょうか。
そんな探偵さんの元には、いかにも訳ありっぽい客が、色々な依頼を持ち込んできます。多くは人探しだったり素行調査だったりするのですが、時には復縁工作やハッキングまがいの行為など、無茶苦茶な頼みを振ってくるというストーリーに出会うことも。それで思ったんです。探偵さんが引き受けられるシゴトって、実際にはどこまでなんだろう、と。
『Q&A探偵・興信所110番―トラブルの実態と探偵業法・プライバシー』(探偵興信所問題研究会/民事法研究会)は、探偵や興信所の仕事内容や、契約をめぐるトラブルの実態・解決方法について説明した書籍です。同出版社による「110番シリーズ」は、身近な法的トラブルや社会問題の解決を指南するもので、女性の労働や過労死について扱った書籍は、大学などで教科書として採用されることも。表紙のデザインに見覚えがあるという方も、いらっしゃるかもしれませんね。
ちなみに同書によると、探偵と興信所の違いは、「興信所は企業の依頼を受けて取引先の信用調査などを行い、探偵事務所は個人の依頼を受けて身上調査や素行調査などを行うもの」なんだとか。但し、明確な使い分けや、業務区分がなされているわけではないようです。
ところで、日本における探偵業には、約10年前までほとんど規制がなかったことをご存じでしたか。2006年6月8日に公布され、2007年6月1日より施行された探偵業法(正式には「探偵業の業務の適正化に関する法律」)は、日本で初めての、探偵業に対する規制立法でした。同法は、探偵業開業時の都道府県公安委員会への届出や報告義務、守秘義務といった“業者規制”と、依頼者への説明書面や契約書面の交付を義務付けた“業務規制”という2本立てとなっています。
こうした規制が設けられた背景には、探偵や興信所の利用をめぐる消費トラブルの多さや、その複雑さがあったようです。具体的な事例としては、「充分な調査をしてもらえなかった」「法外な調査料金を請求された」といった調査契約にまつわるものから、「相談の際に話した内容をネタに、依頼した探偵事務所から恐喝を受けた」という調査側の倫理が問われるものまで多種多様。探偵や興信所なんて、余程のことがない限り訪れない場所のはずなんですが、藁をも掴む思いで頼った先で酷い目に遭う人は、少なくないようです。
勿論、探偵や興信所の利用予定がない方にとっても、読み物として楽しめる仕上がりですので、ご安心を。探偵事務所の調査料金はどのようにして決められているのか、調査のための盗聴・盗撮は許されるのか、一部の探偵業者がおこなっているという「別れさせ屋」や「復縁工作」は本当に可能なのかなど、雑学的な話や、素朴な疑問にも答えてくれています。
日常生活ではなかなか知り得ない世界の実情が満載の1冊。これを読めば、探偵モノのドラマの見方も変わる…かもしれません。
文=神田はるよ