東京都内の全世帯に配布された『東京防災』をもう一度見直そう

生活

公開日:2016/5/18


『東京防災』(東京都総務局総合防災部防災管理課)

 30年以内に70%の確率で発生すると予測されている、首都直下地震。あなたは、その準備ができていますか。

 4月14日21時26分。熊本県を震源にマグニチュード6.5(気象庁)の大地震が起きた。熊本県益城町で震度7。熊本県を中心にあらゆる地域で震度5弱から6弱の大きな揺れを観測した。しかし、これは前震だった。

 4月16日1時25分。またも熊本県を震源にマグニチュード7.3(気象庁)の大地震が起きた。気象庁によると、これが本震だという。熊本県益城町と西原村で震度7。熊本県を中心にあらゆる地域で震度5弱から6強の強い揺れを観測。さらに大分県でも震度6弱の大地震が起きた。

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 14日と16日の大地震によって、九州地方に甚大な被害をもたらし、多くの犠牲者を出した。震度1以上の余震は1400回(5月17日時点)を超えた。今もなお、九州の人々は不安に襲われ、辛い日々を過ごしている。もはや地震は他人事ではない。テレビ画面に映る映像は、我々にも起こる現実なのだ。

 今一度見直したい『東京防災』(東京都総務局総合防災部防災管理課)。本書は2015年9月、東京都内の全世帯に配布された。340ページにおよぶ防災ブックは、災害に対する備えや心構えなどが分かりやすく書かれており、非常事態に備える契機を作ってくれた。しかし、本書を物置や本棚の奥にしまっている人もいるだろう。失くしたり、捨ててしまったりした人もいるかもしれない。本書を開いて備えた方も、一度も読んでいない方も、もう一度『東京防災』を手にとって読んでほしい。

 本書は、必ずやってくる大災害に備えるため、東京の多様な地域特性、都市構造、都民のライフスタイルなどを考慮してつくられた、完全東京仕様の防災ブックだ。さらに、知識をつけるだけではなく、今すぐできる具体的な「防災アクション」を多く掲載している。

 現在、『東京防災』が手元にない方のため、重要な部分を一部紹介したい。

・地震発生のその瞬間
地震発生の瞬間は、頭が真っ白になり、適切な判断が難しい。最優先で自分の命を守るため、すぐに物が「落ちてこない・倒れてこない・移動しない」場所に移動すること。

・発災直後の行動
揺れが収まってから行動すること。火元を確認すること。出口を確保すること。ガラスのある建物や塀を避けること。再び揺れを感じたら、すぐに物が「落ちてこない・倒れてこない・移動しない」場所へ避難。万が一、閉じ込められて身動きができなくなったら、硬い物で周りを叩いて大きな音を出す。その音で救助を求めていることを外に知らせる。大きな声を出して助けを求めると、体力を消耗して命の危険があるという。

・発災時のNG行動
火災の危険があるので火はつけない、ブレーカーを上げて通電させない、電気のスイッチに触れない。
エレベーターは閉じ込められる危険があるので使わない。
裸足で歩かず、スリッパなどを必ず着用する。
ケガをする危険があるので、救助活動は一人ではなく、必ず複数で行う。

 ここで紹介したのは、重要な部分のほんの一部だ。本書にはこの他にも、避難について、備えについて、耐震対策・防火対策について、応急処置について、そのほかの災害についてなど、詳しく分かりやすく書かれている。『東京防災』を失くしてしまった、捨ててしまったという方も安心してほしい。東京都防災ホームページによると、都庁や書店で『東京防災』を一冊140円(税込)で購入できるそうだ。詳しくは同ホームページを確認してほしい。

 『東京防災』は東京仕様の防災ブックだが、いざというときに必要な情報がたくさん載っている。ぜひ他道府県の方々も手にしてほしい。一人一冊持っていても損はないと断言できる。

人間は天災に勝つことはできない。しかし、備えることはできる。もう一度、防災について考え直してほしい。

文=いのうえゆきひろ