あなたの常識は、他県の非常識かも!? 北海道出身のダンナと関西出身のヨメが見つけた、県民性の違いがおもしろい
公開日:2016/5/21
宮城県から上京してきたばかりの頃、東京との文化の違いにたびたび驚いた記憶がある。たとえば、言葉の使い方。「ゴミ投げてくる」と言った時には周囲の人たちから制止されたし、会話の途中で「だから、だから」と言おうものなら、「……何?」と訝しげな顔を向けられた(ここで説明しておくと、「投げる」は捨てるという意味で、「だから」は相手の話に同意する際の相槌である)。こんなに狭い日本国内でも、場所が変われば言葉の使い方も変わるんだなぁと痛感したのだ。
このような言葉や文化の違いは、どの県にもあることだろう。それは時に理解の範疇を超えてしまうこともあるが、だからこそおもしろい。『北のダンナと西のヨメ』(横山了一/飛鳥新社)は、そんな県民性の違いをテーマにしたコミックエッセイ。北海道出身の横山了一さんが、兵庫県出身の奥さんとの生活のなかで見つけた、「お互いのあたりまえ」を描いているのだ。
ふたりの会話は、まず単語のアクセントが異なる。正直、意味が通じればアクセントなんてどうでもいいと思ってしまうのだが、奥さんに言わせれば「地元のアクセントは大事にせなあかんで!」とのこと。しかし、それ以上に気になるのが、方言だ。「これ、ほかしといて」「いきしにバター買ってきてくれへん?」。きょとーん。……これには横山さんも「わかんない言葉が多すぎる」と閉口してしまったよう。とはいえ、彼自身も「この米、うるかしといていい?」なんて言った暁には、「ごめん、全然わからへんわ!」とツッコまれてしまう始末。生まれ育った土地がこうも違うと、日常会話レベルで理解できないことが頻出するのだ。
その違いは、もちろん食文化にも顕著に表れている。道民である横山さんにとって、海産物は珍しい食べ物ではない。実家の冷蔵庫には、イクラ、たらこ、すじこ、とびっこなどの魚卵系も常備されており、それらをまるでふりかけのように食べていたのだ。もちろん、奥さんからすると衝撃的。ありがたみを微塵も感じさせないその食いっぷりは、怒りを覚えるほどだったそう。逆に、奥さんの実家では、カレーやすき焼きに神戸牛を使用する豪華っぷり。それに対し横山さんは、「カレーとかすき焼きに、こんなに牛肉を使っていいのか……」と驚いてしまったのだ。
また、関西では、買い物をする際に、客と店員が互いに「ありがとう」と言い合うやり取りがよく見られる。さらに、道端で地図を広げていると、必ずおばちゃんが道を教えてくれる上に、「あめちゃん」も貰えるとのこと。これは奥さんと結婚し、関西へたびたび遊びに行くようになったからこそ知ることができた、西の温かな県民性。横山さんは、そういった県民性を知り、驚くとともに感動も覚えたという。
こういった県民性の違いは、時に喧嘩の火種になってしまうこともあるだろう。けれど、横山さん夫婦のようにそれを楽しむことができれば、毎日が発見の連続でワクワクしたものになる。そう考えると、明日から人と会うのが楽しみになるような気がする。まずは、「出身はどちらですか?」から始めてみたい。
文=五十嵐 大