1000万部売りたい「ラノベ編集者」が突き進む!お仕事マンガの新星『金のタマゴ』
公開日:2016/6/4
黒木華主演で実写化されたマンガ『重版出来!』(松田奈緒子/小学館)。新人マンガ編集者が目標に向かって突っ走る、爽快感あふれる物語だ。この作品で、そんなマンガ編集者の世界を初めて知った、という人も少なくないはず。
編集者という仕事は、基本的に縁の下の力持ち。作家ばかりにスポットライトが当てられるため、彼らの実態を知らないという人が当然だろう。けれど、作品を世に送り出すべく奮闘する彼らの姿は美しいもの。『重版出来!』がヒットしているのも、そういった姿に感動を覚える読者が多かったからではないだろうか。
そして最近、またひとつ編集者を主人公にしたマンガが誕生した。それが『金のタマゴ』(カツヲ/講談社)だ。本作の主人公は、新人ライトノベル編集者の珠子(たまこ)。彼女の夢は、「担当作品を1000万部売る編集者になること」なのである。この出版不況といわれる時代において、なんとも志の高い編集者ではないか。
けれど、珠子はまだ新人。編集のイロハも理解していないため、大きな仕事は任されない。配属されて2カ月、いまだ電話番と新人賞の一次選考、そして雑務をこなすだけなのだ。それに比べて、同期の高瀬はマンガ編集者として着々と成長している。それを見て、どうしても焦ってしまう珠子。
そんな彼女にいよいよチャンスが訪れる。初めて担当作家を持つことが許されるのである。その作家の名前は、「心停止☆走馬灯(ときめき☆メリーゴーランド)」さん。こうして、珠子と心停止☆走馬灯は、売れるラノベを作るという目標に向かって走りだすのだ。
本作は、4コマ形式で進むタイプの作品なので、非常にとっつきやすく、さくっと読める。暴走しがちな珠子と、それを諌めつつ見守る高瀬とのやり取り。編集者としての仕事ぶり。新人作家との押し問答。マンガを通して、ラノベ編集者の日常を垣間見ることができる。
ちなみに、珠子はなんの理由もなしに「1000万部売る編集者になりたい」と言っているわけではない。そこには、深い理由があるのだ。それについては、ぜひ本作を読んでいただきたい。夢を叶えることの難しさ、そして、それでも諦めなければ奇跡が起こる瞬間はやって来る、ということが描かれている。コメディタッチな本作において、感動を呼ぶ名エピソードだ。
いま、注目を集めている編集者という職業。作家を全力で支える彼らの生き様からは、きっと勇気がもらえるだろう。そして、もしかしたら、次に話題になるのはこの「ラノベ編集者」かもしれない!
文=五十嵐 大