信長は騙されやすい人だった!? 映画やドラマが描けない、戦国時代のウソホント
更新日:2017/11/15
年号の暗記は嫌いだけど、試験に出ないような歴史の横道は大好き。「実はこの人こうだったんだよ」なんて人間関係の裏側が見えたら、さらに大好物。ときにはテレビや映画の演出に「史実とちがうのに~」なんて突っ込みを入れてしまう人におすすめなのが『教科書には載っていない!戦国時代の大誤解』(熊谷充晃/彩図社)。受験にはたぶん…役に立たないが、人生を楽しむ役に立つ雑学トリビアにあふれた一冊だ。
たとえば、かの有名な織田信長、比叡山焼き討ち事件。武装勢力でもあった延暦寺の仏僧たちに服従を求め、最終的には山を片っ端から焼き払い、老若男女とわず皆殺しにしてまわったという冷酷な残虐性をあらわにする所業だが、これ、じつは「誇大広告」だったというのである。調査によると焼失したのは根本中堂と大講堂だけ。しかも生活拠点は別だったために、火を放った際は人もほとんどいなかったとか。
ほかにも、信長が「鉄砲を先駆けて使いこなしたためにのしあがった」というのも史実とちょっとちがうようで。こちらも有名な、長篠の戦い。柵をたて、その内側で火縄銃を準備する人、構える人、撃つ人の3隊にわけて応戦したため、絶え間ない銃撃戦が可能となった信長の策謀が光ったとされるこの逸話も、著者いわく“ファンタジーが膨らみすぎ”だそう。さらには信長、どちらかというと人を信じ過ぎて痛い目を見る“いい人”だったという話も!? ……実際どうだったのかは、本書を読んでお確かめいただきたい。
そのほか、「最強と謳われた武田騎馬軍は存在しなかった!?」とか、「忠義の塊と語り継がれる三河武士は、実情は裏切りだらけだった」とか、ともすれば夢を壊しかねない事実が連発! では知らなきゃよかったのか、というと、知ったほうがより面白さが深まっていくのが不思議なところだ。たしかに明かされた史実をそのまま実写化すれば、画面の派手さはやや減るかもしれない。だがそのかわり、領地のローカル憲法に「飲みすぎて吐くのは見苦しいから酒宴禁止」と書いた城主がいたり、茶器バブルが起きたせいで名器が領地のかわりとして取引されたりといった、意外な人間臭さや常識が浮かび上がってくるのだ。
事実は小説より奇なり。わかりやすいスペクタクルはなくても、入り組んだ人間模様が歴史により深みを増してくれ、物語にも厚みが増す。本当の戦国時代を知ればますます虜になっていくこと間違いなしだ。
文=立花もも