「テキトー男」高田純次の格言は下ネタだらけ?! その中に隠された深い意味を感じとれるか?

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公開日:2016/6/9


『高田純次のテキトー格言』(高田純次/KADOKAWA 角川マガジンズ)

 本を探しに本屋へ寄れば、店頭で話題の新刊がいろいろ並んでいる。仕事柄、軽く何があるか確認していると、ある一冊の本に目が留まった。『高田純次のテキトー格言』(高田純次/KADOKAWA 角川マガジンズ)である。まあ芸能人の本なので店頭にあるのは自然な話。なぜ気になったかといえば、先日開催された某声優ユニットによる東京ドームライブの物販会場にて、本の著者たる高田純次氏が目撃されていたからだ。「そういえばかよちんを気にしてたな…」などと思いつつ、手に取ってみることに。

 高田純次氏といえば、タイトルにもある「テキトー」な人物としてつとに有名である。「適当」にもいろいろな意味があるが、この場合は「いいかげん」が該当。会話のやりとりとか行動がかなり「テキトー」であるため、そう呼ばれるのだ。ゆえにこの書にもさぞテキトーな格言とやらが羅列されているのだろうと思ったが……。

 こ、これは! テキトー以前の問題で、なんと下ネタのオンパレードだった!! 本書は「あ」から始まる、いわゆる50音で46の格言が並んでいるのだが、そのうち半数以上が下ネタで占められていたのである。ちなみに高田氏は今年で69歳。それでも性欲バリバリのエロジジイっぷりはすごい。それを端的に表す格言があった。

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「老いても交尾したまえ」

 元になっている格言は「老いては子に従え」だが、ここでは全く関係ない。高田氏によれば「人間の体は、使ってないとダメ」なのだそうだ。精力増強剤を使ってでも頑張っていれば、いずれ薬なんていらなくなる、と。よく考えれば性欲があること自体、元気である証ともいえる。この格言、実は老いても元気でいるための秘訣を暗に説いているのか!? ……うん、多分考えすぎ。

 ところでこの高田氏、かつては宝石会社でサラリーマンをやっていたらしい。それがなぜ、芸能界という不安定な世界へ飛び込んだのか? その答えが格言にあった。

「我なぜにドジ踏んだ?」

 元の格言は「割れ鍋に綴じ蓋」だが、ほとんど原形を留めていない。ドジというのは、かつてサラリーマンとして働いていたとき、ズボンの裾がダブルの折り返しだったのだが、そこに2個のダイヤが入ったまま帰宅したこと。結局、それが元でクビになってしまったというのだ。漫画みたいな展開だが、これが漫画なら笑い話でオチたかもしれないが、現実だからクビになったのか。そこから劇団「東京乾電池」に参加し、現在は会社を設立して社長である。格言的には「災い転じて福となす」が当てはまりそうだ。

 そういえば先に50音で格言が並んでいると書いたが、もしかしたら「『を』とかどうなっているの?」と気になっている向きもあるかもしれない。その答えがこれだ。

「をいにぃキツし、勃つ気にならじ」

 ……「をいにぃ」って何? 「匂い」のギョーカイ用語なのか!? 多分、ムリヤリなものになるというのは想像していたが、テキトーにも程がある! ……ん、待てよ? これは「テキトー格言」なのだから、それでいいのか。こうやってツッコむこと自体、実は作者の手のひらの上で踊らされていたということ。実にしてやられた気分だ。

 本書は終始、このようなテイストで構成されている。しかしその中で、うまいというか、ズルいと思ったことがひとつ。それは合間に「適当男のノスタルジア」というコラムが挿入されているのだが、そのエピソードのひとつに母親のものがあった。32歳という若さでこの世を去った母親との悲しい別れの物語である。下ネタ全開のテンションから、一気に哀愁モードへ持っていく。このギャップで好感度を上げようというあたりが、うまいというかズルいというか……。しかしあの人懐っこい笑顔で「ガハハ」と笑っている高田氏の姿を思い浮かべると、なんでも許せてしまう気分になるのが不思議なところである。

文=木谷誠