選挙権年齢が2歳下がったぐらいで何がどう変わるの?「あなたの一票」の重みがよくわかる父子の会話

社会

公開日:2016/6/23


『きみがもし選挙に行くならば』(古川元久/集英社)

 少子高齢化が急激に進み、1000兆円を超える莫大な借金を抱え、貧困にあえぐ人々が増加している日本は、ゆっくりと沈んでゆく船のようなものだ。その船の上で暮らしている私たちが未来を変えるチャンス、それが選挙である。

 7月の参院選から18歳、19歳の新有権者が投票できるようになる。高校生や大学生に向けた啓蒙活動も全国各地で活発化している。

 しかしまだ次のような理由で、選挙に関心を持てない人もいるかもしれない。

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「自分ひとりが投票してもどうせ何も変わらない」
「政治のことも誰に投票すればいいかもわからない」
「政治家は信用できない」
「投票に行くのが面倒くさい。他のことで忙しい」

 ……など、選挙に行かない理由はいろいろあるだろう。しかし『きみがもし選挙に行くならば』(古川元久/集英社)を読めば、あなたの一票がどれだけあなたの人生に影響をおよぼすかがよくわかる。

 本書では、現職国会議員と16歳の彼の息子との対話形式で、この国が直面している課題をひとつひとつ噛み砕くように解説している。

 政治のからくり、選挙の仕組み、民主主義のシステム、国会議員の仕事、日米関係、沖縄問題、安保法制、雇用不安、消費税増税と社会保障改革の関係……。

 その多くが、“選挙に行く人たちに選ばれた政党や政治家”が生み出したものであることもよくわかる。

 今の日本は4人に1人が65歳以上の高齢者だ。生産年齢人口(15~64歳)のわずか2.3人で1人の高齢者を支えている(※)世界でも断トツの高齢者大国で、その割合はますます高まっている。当然、選挙で投票するのも高齢者の割合が多くなり、政党が高齢者優遇政策を競い合う「シルバー民主主義」も問題視されている。

 今の日本が直面している問題は少子高齢化や国の借金や貧困だけではない。

 戦争参加を認める安保法制、非正規労働者の増加、借金地獄をまねく奨学金問題、待機児童問題……。私たちの生活はすべて政治とつながっているのだ。

 本書から、一票の重みがよくわかる父子の会話を一部紹介しよう。

息子 若者が少なくて選挙にもあんまり行かないんだったら、選挙権年齢が2歳下がったぐらいで何がどう変わるのかなって思っちゃうんだよね。

父 新有権者の人口は 240万人ぐらい増えると言われている。日本全体の有権者人口はだいたい1億人ちょっとだから、それとくらべたらたしかに小さいけれど、選挙っていうのは選挙区ごとに行われるものだから、全体の数字を見てもあんまり意味がないんだ。

息子 たしかにそう言われればそんな気がする。

父 衆議院議員選挙は全国で295の選挙区があって、それがすべて、当選者が一人だけの小選挙区だ。そのほかに比例で180人の枠がある。参議院議員選挙は仕組みが複雑なんだけど、次の(2016年7月の)選挙で行われるのは比例区で48枠、選挙区で73区だ。

選挙区はほぼ都道府県の単位になっていて(鳥取県・島根県と徳島県・高知県はそれぞれ2県で合区)、45選挙区のうち32選挙区は当選者が一人だけの「一人区」になっている。何が言いたいかというと、「一人区」も小選挙区も、誰か一人しか当選しないわけで、与党と野党の候補が競り合っている場合は、微妙な票数の差で勝敗が分かれることになるんだよ。

(中略)
仮に(新有権者の)投票率50%とすると、1選挙区で4000票の若者が増えることになる。4000票って小さいように見えるかもしれないけど、接戦だとそれで十分勝敗がひっくり返る可能性があるんだ。

 たかが一票、されど一票。

 沈みゆく船をただながめているか、船が沈まないためにできることを実行するか。あなたの一票がこの国の未来を変えるのだ。

文=樺山美夏