ただ自分を紹介するだけじゃダメ! 聞き手の心に響く自己紹介術
公開日:2016/7/4
自己紹介が得意だという人がどれくらいいるだろうか。セールスマンや就職活動中の学生は、自己紹介の仕方を工夫するだけで大勢の中から頭ひとつ抜け出ることができる。それなのに、多くの人が自己紹介を単純に自分を紹介することだと思っている。そこで、自分にとっても相手にとっても意味のある自己紹介とは何かを知るために『すごい自己紹介』(横川裕之/泰文堂)という本を取り上げる。
自己紹介とはただ自分を紹介することではない
「自己紹介」というと文字通り「自分で自分を紹介すること」だと思っている人が多い。しかし、自己紹介とは何のためにするのかを今一度考えてみよう。「初対面の人に自分のことを知ってもらうため」と答える人が多いかもしれないが、それは紹介する側の思いでしかない。聞く側としては、必要なのは自分にとってメリットのあることや興味のあることだけだろう。だから「自己紹介をしてください」と言われて、ただプロフィールだけを語ったのでは聞き手の心には響かないのだ。
聞き手の心に響く自己紹介とは?
著者も初めから自己紹介が得意だったわけではない。得意どころか強烈な苦手意識を持っていたそうだ。そのため、すがる思いで読んだビジネス本に書かれていた言葉を鵜呑みにして、自分の欠点や弱みを明かすような自己紹介をしていた時期もあったという。しかし、自己開示から始める自己紹介が引き寄せてくるのは、モノやサービスを売り込もうとする人ばかりだったらしい。そのような失敗を経験する中で、著者は自己紹介の意味に気が付いた。聞き手の心に響かない自己紹介は「自分」を紹介しているのに対して、心を強く打ち抜く自己紹介は「未来」を紹介しているものだったのだ。つまり、「私と関わることであなたの未来にはこんなよいことがありますよ」ということを語れば、相手の心に響く自己紹介になるというわけだ。
自己紹介の目的は聞き手を自分の思い通りに動かすこと
聞き手の心に響く自己紹介を「聞き手にとってどんなメリットがあるかを語ること」と定義付けると、相手のメリットばかりを考えたものに思えるかもしれない。しかし、自己紹介の目的はあくまでも「聞き手を自分の思い通りに動かすこと」だと著者は言っている。つまり、聞き手に興味を持たせて、自分を選ぶようにコントロールすることが自己紹介の真の目的なのだ。だから、自己紹介は聞き手が自分と関わることでどのような未来が待っているのかを想像できるものでなければならない。少しでも未来が垣間見えるようにしておけば、興味を持った人は自分に質問をしたくなるし、関わりたくなるはずだ。
自己紹介するためにはまず自分を好きになること
自分のことが好きと言い切れる人はあまり多くないだろう。でも、人は好きでないものは心から人に勧められない。だから聞き手の心に響く自己紹介をしようと思ったら、まず自己分析をして、自分を好きになる必要がある。ありのままの自分が好きになれないなら、理想の自分を思い描いて少しでもそれに近づけるように動いてみるしかない。そうすれば自分自身に好きな部分ができ、人にも勧められるようになるはずだ。
伝わる自己紹介ができる人は伝えることをあきらめている
この本の中には数々の印象的な言葉があったが、中でもおもしろいと感じたのは「伝わる自己紹介ができる人は伝えることをあきらめている」という言葉だった。大勢の人を相手に自己紹介をするとき、どうしても全員を意識してしまいがちだが、それでは誰にも興味を持ってもらえない自己紹介になってしまうというのだ。「全員に自分の話を聞かせよう」ではなく、「たった1人でも自分の話に共感してくれる人がいたらいい」と開き直り、真剣に聞いている人に視線を向けて語り掛けるように話せば、自然と多くの人が興味を持つような話し方になるらしい。
自己紹介はコミュニケーションの入り口のようなもの。だから、わざわざ「自己紹介を」と言われなくても、気付かないうちにしていることが多い。だから、周りに人だけでなく仕事やお金もどんどん集まってくるような人は、相手にとってのメリットを上手に盛り込んだ自己紹介ができているのだろう。そう考えると、すごい自己紹介はビジネス上でも人間関係を築く上でも究極の武器となりそうだ。
文=大石みずき