自衛戦争は合憲!? 英語版でわかった「日本人の知らない日本国憲法」
公開日:2016/6/29
7月の参院選の争点の1つといえば、「憲法の改正」。実は、日本国憲法には、「GHQが読んだ、英語バージョン」があるのをご存じでしょうか? その内容を徹底的に読み込んでいくと、これまでの憲法観を覆す「裏側」があることが分かってきたのです。
『英語版で読む 日本人の知らない日本国憲法』(KADOKAWA)では、理論言語学者の畠山雄二氏と、ジャーナリストの池上彰氏が、この「英語版憲法」の全貌に鋭く切り込んでいます。
そもそも現在の憲法は、連合国軍最高司令官総本部(GHQ)の要求を受けた形で、1947年5月3日に、大日本帝国憲法を改正するという形で施行されました。
よく知られているように、下敷きとして「マッカーサー草案」による草案を提示され、それを大幅に改訂してできあがったのが、現在の憲法。本書で切り込んでいる「英語版憲法」とは、このときに「GHQが読み、日本にOKを出したもの」、つまり、憲法を承認した人たちが読んだものです。
つまり、ここでいう英語版憲法とは、普通の翻訳版ではなく、「憲法のもう一つの姿」と言えるのです。
さらに英語版は、英語という言語の特性上、主語や目的語が明確になっています。この英語版を正確に読むことで、日本語版ではあいまいだった点などが明らかになります。
どのような点かというと……。
・憲法の序文が「アメリカ合衆国憲法」のコピペだったこと
・翻訳者の独自解釈により、意味が変わって伝わっていること
・英語と日本語で、解釈が異なること
などなど、これまでの憲法観を覆す、衝撃的な事実が次々と明らかになってくるのです。
それでは、憲法で最も大きな争点となっている「第9条」は、英語と日本語でどのような違いがあるのでしょうか。(条文は難しいので、飛ばして解説を読んでください!)
ARTICLE 9. (1) Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
第九条 第一条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
英語版と日本語版を言語学的に比較すると、実はいくつかの「問題点」があることがわかりますが、ここではその1つを紹介します。
「英語版第9条」の問題点の中で特に見つけやすい部分は、「国権の発動たる戦争」を、「war as a sovereign right of the nation」と訳した箇所です。そもそも、「国権の発動たる戦争」って何でしょうか? なんだかピンときませんね。実はこの部分、英語を正確に和訳したほうがわかりやすくなります。
「sovereign right」は難しい語句で、「国が自主的に行うことができる権利」という意味。戦争をする権利を行使する自主性や主体性、権利を行使する能動的なニュアンスを読み取れる表現となっています。そうした文脈から、「war as a sovereign right of the nation」はつまり、「国が自主的に行う戦争」を指すと考えられます。
「国権の発動たる戦争を放棄する」というと、「国の権利として行うすべての戦争を放棄する」というニュアンスですが、「War as a soveregin right of the nation」というと、「自分から起こす戦争を放棄する(=自衛戦争は放棄しない)」と読み取ることができます。
つまり、英語版のニュアンスに習う場合、「自衛戦争」は放棄していないのではないか、という議論が可能になってくるんですね。
日本国憲法は、GHQ(国際社会の代表)からの承認を得て施行された歴史がありますが、英文を読み解いていくことで、日本人が知らなかった「裏の顔」が明らかになってくるというのはなかなか興味深いところ。同書では、さらに驚愕の「第9条の“真”解釈」を徹底的に解明してるので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。