もしやこれは節約料理? お皿の上のブルターニュ! ガレットとクレープをおうちでも♪
公開日:2016/7/2
初めてガレットを口にしたのは、赤いひさしが印象的なパリのクレプリーだった。白いお皿の上で、四角に折りたたまれた「そば粉のガレット」が香ばしい香りを放っていたのを覚えている。確か注文したのは、サーモンのガレットだ。あれから10年、日本でもおしゃれなランチとして、食すことができる店が増えた。とはいっても、リーズナブルとは言い難い。もっと気軽に楽しむためには、やはりこの方法しかないのだろう。それは「本場のレシピ」で作ること。
『ブレッツカフェ』(ベルトラン・ラーシェ:著、千住麻里子:訳/柴田書店)は、1996年にクレープガレット専門店「ル・ブルターニュ」を神楽坂にオープンさせた、ベルトラン・ラーシェ氏による著書である。ブルターニュ発祥のガレットを、日本に広めたと言える彼のこの本には、60品のガレットとクレープのレシピが並ぶ。仏語版、英語版に続いての日本語版、おすすめする理由は、ただのレシピ本ではないからである。
まず、前半21ページにわたり、ブルターニュ地方の主要食材について語られている。これらはガレットに欠かせない食材であり、本場の味を守るための大切な食材でもある。肉、海産物、野菜、乳製品と続くが、印象的なのは「そば粉」の話だ。そば粉は、日本特有の穀物ではなかったのか? なぜ、ブルターニュにそれが存在するのか? 疑問に思っていたなら「え? そうなの?」という驚きと共に、その優秀さを知ることとなるだろう。読みごたえたっぷりの内容は、次々とおいしいものを想像させるので、突然お腹がすいてしまうことを伝えておきたい。
ガレットの基本は生地にある。生地作りは「材料を混ぜるだけ」ではあるのだが、冷蔵庫で休ませる理想の時間は12時間だという。おいしくなるための12時間に期待が膨らむことだろう。また、レシピを守れば、多少焼き方にムラができても、味は保証されるようだ。というのも、家庭ではクレープ専用焼き器や、生地を薄く広げるラトーがないからである。だが、レシピによっては、スーパーの冷蔵品売り場にある、市販のガレットを使用してもいいという。これには驚いた。本格的なレシピ本であるにもかかわらず、この柔軟性。「作る」ということに意味があるのだと教えてくれているようだ。
では、簡単に作れるレシピをご紹介しよう。まず、昼食の定番にしたいのが「ガレット・コンプレット」だ。どのクレプリーにも必ずあり、シンプルなおいしさが人気である。フライパンで薄く生地を焼いたら、卵を割り入れ、白身部分を伸ばし、おろしたチーズとハムを加えるだけ。4ヶ所を内側に折りたたみ四角に成形し、表面にバターを塗り、黒挽こしょうをかけたらできあがり。そう、基本は薄く焼いた生地に、食材をトッピングするという簡単なものなのである。
夕食に食べるなら、「アミューズガレット」はいかがだろう。自宅に友人を招きたくなる、前菜レシピである。フライパンに生地を流したら、グリルしておいたアスパラガス、生ハム、すりおろしたチーズを加え、焼けたら小さく折りたたむ。まるで大きな春巻きのようだ。これを、一口大に切り分けていただく。お酒を片手に、話が弾むレシピである。
最後は、デザートに最適なクレープをご紹介しよう。有塩バターで作る、シンプルな一品をおすすめしたい。フライパンで焼いた生地を、4つに折りたたみ扇型に。お皿に移したら、有塩バターとカソナード(赤砂糖)をトッピング。有塩バターがないからといって、無塩バターを使用することは避けたい。この塩がガレットの風味を更に引き立てるというのだから。焦りは禁物、無塩バターに、塩を適量混ぜるだけでいいのである。
忘れてはならないのがリンゴのお酒「シードル」の存在だ。ガレットとシードルは、黄金コンビと言えるだろう。種類はさまざまで、地方や国によって製法が異なれば、味も当然変わる。本書では、各ガレットやクレープに合ったシードルが紹介されているのだが、なんと日本国産のものも登場している。それは、歴史と伝統の都や、酪農の大地と呼ばれる場所で作られたものだ。まずは、地元産シードルがあるかを探し、あればガレットと合わせてみるのも面白いだろう。
本場のガレットを家庭で味わうための基本材料は4つ。そば粉、小麦粉、浄水、粗塩。あとは、冷蔵庫の定番、卵やハム、チーズがあれば完璧だ。もしかすると、これは節約料理とも呼べるかもしれない。
文=くみこ