カラダを重ねた先に「本当の好き」は見つかるか? 大人の駆け引きを描いた『GAME』
更新日:2016/8/22
「好き」っていったい、なんだったっけ……。と、中学生みたいな根本的な疑問にぶちあたりぎみなのが、仕事をがんばるアラサー女子。別に女を捨てているわけじゃない、ただ仕事より好きな人に出会えなかった、それだけ。だけど仕事をほったらかしてまでするのが素敵な恋? カラダを重ねていけばやがて恋にたどりつくの――? そんなオトナの思春期を描いたマンガが『GAME』(西形まい/白泉社)だ。
主人公は「あいつはもう女じゃねー!」と陰口をたたかれるほどTHE仕事人間な小夜。まあ、そうはいっても、いたしている真っ最中に仕事の電話に出られたら、男だって傷つくし振られもしますよ……。と、歴代彼氏たちに同情を禁じ得ないところもありますが(逆の立場でもかなり悲しいと思う)、仕事を優先しすぎてしまう気持ちはわかる。だって仕事は裏切らない。頑張れば頑張っただけの成果が出るし、むりに女らしさを気取る必要だってない。そう思って全力で邁進してしまい、恋を置き去りにしている働く女子は世の中多いんじゃないでしょうか。
だから、わかる。仕事でもプライベートでも「おまえ男かよ!」と言われてしまう小夜が、女である自分にやるせなさを感じてしまう瞬間も、それでもがんばるしかない意地も。それを見抜いてちょっかいを出してくるのは、新入社員の桐山くん。期待の新人である一方、相当に女遊びをこなしてきたと思われる彼に口説かれ、押されて、呑まれて、小夜はうっかり彼と関係を持ってしまうのです。……なんだそれ、社会人にとって夢のようなシチュエーションじゃないか! ただしそれが、「遊び(ゲーム)」じゃなければの話ですが。お互いに経験は豊富でも「好きってなんだよ」状態な2人。「次はちゃんと好きな人と付き合いたい」という小夜のもと、ゲームのルールが決まります。
「お互いがお互いのことを本当に好きになったら付き合う。それまではあくまでカラダだけの関係」というルールのもと、「溺れたくない」「相手を屈服させたい」「でもカラダを重ね合うのは気持ちいい」と欲望のままどんどん突き進む2人。意地っ張りでドS気性の2人が(とくに小夜が)「“自分から”好きになるのはいやだ」と思っているのは明白で、そんな面倒はよしてもうつきあっちゃえばいいじゃないか……と言いたくもなるのですが、意地の張り合いこそがゲームのスパイスでもあるし、じれったい駆け引きを楽しませてほしいというのも本音です。果たして彼女は、「本当の好き」を見つけられるのか? 2人の行く末をじりじりしながら見守っていきたいと思います。
そして、いったいどんな人生を歩んできたら新卒でそんな仕上がりになるんだい? な桐山くんの鉄面皮を、今後どうやって小夜が崩していってくれるのかも期待大な作品です!
文=立花もも