祝・生田斗真×岡田将生で映画化! 清水玲子『秘密 THE TOP SECRET』の3つの秘密
更新日:2017/6/4
2060年、「MRI」と呼ばれる技術によって、死者の脳をスキャニングし、生前に見ていた映像を再現することができるようになった。『秘密 THE TOP SECRET』(白泉社)は、そんなMRIを専門とする警察庁の「科学警察研究所 法医第九研究室」、通称「第九」の面々を描いた近未来の警察ドラマ。2001年に第1巻が発売されて以来、本編の全12巻に加え、続編となる『秘密 season 0』1~3巻が刊行されている大人気シリーズだ。
この度映画化されることになった『秘密』シリーズの作者、清水玲子先生を、本日発売の『ダ・ヴィンチ』8月号が特集している。誌面には収めきれなかった話を含めて、著者・清水玲子先生と『秘密』の秘密をチラリとご紹介する。
[秘密その1]美しすぎる残虐シーンの元ネタはイタリアの博物館
清水玲子作品には時折、目を覆いたくなるような残虐シーンが登場する。しかしその美麗なタッチに掛かればそれすらも作品の魅力となる。怖いけど見たい。見たいけど怖い。アンビバレントな感情をかき立てるそれは、もはや官能的ですらある。
そんな残虐シーンを描く際に、清水先生には参考にしている本があるという。それはイタリア・フィレンツェにあるラ・スペコラ博物館の写真集『Encyclopaedia Anatomica』である。この博物館、なんと18世紀に多数作られたという人体解剖蝋人形を集めた、その筋では有名な博物館なのだ。
「いちいちお耽美なんですよね。死体を寝かせたシーツもとってもきれいに作ってあって、ポー ジングもきれい。髪の毛は本人の髪 の毛らしいです。すごいこだわりようですね」(『ダ・ヴィンチ』8月号より)と、清水先生も大のお気に入り。ネットで購入することもできるので、興味があれば探してみてほしい。
[秘密その2]『秘密』は海外ドラマと青年マンガに影響を受けている
『秘密 THE TOP SECRET』の前作『輝夜姫』の連載中に、アメリカのドラマにはまったという清水先生。
「『CSI:科学捜査班』 とか『ザ・プラクティス ボストン 弁護士ファイル』とかおもしろいですよね。1話で映画1本並みの迫力があって、しかもちゃんと完結させる。『秘密 THE TOP SECRET』の最初の大統領のエピソードは影響されているかもしれませんね」(同上)
そして少女マンガとしては規格外のスケール感は、青年マンガを読み込んで培ったものだ。やはり『輝夜姫』連載時から意識的に読むようにしていたという。
「『サンクチュアリ』(史村翔:原作、池上遼一:作画/小学館)や浦沢直樹先生の作品、特に『MONSTER』(小学館)が好きでした」(同上)
[秘密その3]ターニングポイントとなった作品の存在
清水先生の最高傑作と名高い『秘密』だが、そこに至るまでにはターニングポイントとなるある作品があった。それがファンのあいだで今も伝説の名作とされている『22XX』(白泉社文庫)。なんとカニバリズム(人肉食)を描いた作品だ。
「これを描くときがいちばん怖かったですね。カニバリズムなんて大丈夫かな、いくらなんでも少女マンガで描いていいのかしら、って。でも、当時の担当さんが後押ししてくれて。『大丈夫だから』って」(同上)
『22XX』はカニバリズムを描いてはいるが、カニバリズムを売りにした作品ではない。清水作品ではおなじみのヒト型ロボット・ジャックと、人肉食の習慣を持つフォトゥリス人、ルビィとの交流を描いた、悲しくも心揺さぶられる物語だ。
「不真面目な描き方をしなければ読者はちゃんと受け止めてくれるんだな、と思いました。この作品がなかったら、『輝夜姫』も『秘密 THE TOP SECRET』も描いていなかったかもしれません」(同上)
もともとは絵が描きたくてマンガ家になったという清水玲子先生。だからこそ物語を作るうえでは、さまざまな要素を貪欲に吸収してきたのだ。気がつけば美しさと切なさを湛えた唯一無二の物語を紡ぎ出す、稀代のストーリーテラーとなっていた。未読の方も、この機会にぜひ清水玲子ワールドに浸って欲しい。
文=小田真琴