俺様すぎるファラオとの時空を超えた愛! 連載40周年を迎えた『王家の紋章』がついにミュージカルに!

マンガ

更新日:2016/7/11


『王家の紋章(61)』(細川智栄子あんど芙~みん/プリンセス・コミックス)

『王家の紋章』と言えば1976年に連載を開始して以降、空前のエジプトブームを巻き起こし、今年連載40年を迎える超長期連載の少女漫画として、少女漫画好きには知らない人のいない名作中の名作です。母子揃って愛読者という読者も多く、今なおその人気は衰えることを知りません。圧倒的スケールのためか実写ドラマ化、映画化などの話が不思議となかった『王家の紋章』ですが、2016年8月に帝国劇場にて初のミュージカルが上演されることが決定しており、ファンの中でも注目を集めています。

 漫画の設定としては古代エジプトのファラオであるメンフィスの墓を発掘調査のために暴いたアメリカの大富豪リード家が王家の呪いを受けて、神殿の祭祀でありメンフィスの姉であるアイシスの呪術により、一人娘のキャロルが古代エジプトにタイムスリップしてしまうというもの。アイシスは古代エジプトでキャロルを神殿の生贄としてささげようとしますが、意に反して弟メンフィス王の目に留まってしまい、キャロルはメンフィスから熱烈な求愛を受けることになります。

  当初は現代人の感覚から乱暴で荒々しい気性のメンフィスを恐れ、なんとか現代のアメリカに帰ることを模索するキャロルでしたが、次第に一途に自分を想うメンフィスの激情や、王者としての誇り高さに惹かれていき、現代の英知をもち、心優しいキャロルを伝説のナイルの女神ハピの娘、「ナイルの娘」として信頼を寄せるエジプト国民のためにも古代エジプトで生きていくことを決意します。

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 古代エジプトの呪い、タイムスリップ、ファラオとの胸焦がす熱い恋、強力なライバルたちの嫉妬、キャロルを付け狙う隣国との争いなど毎回ジェットコースターのように窮地に陥るヒロインの姿にハラハラドキドキし、熱烈に愛されるキャロルをちょっぴりうらやましく思いつつも「こんな面倒な恋はごめんだな」と思うことも多いこの漫画。なんといってもヒーローである古代ファラオ、メンフィスの猛々しさは一味違います。

 出会った当初、 自分の意のままにならないキャロルを灼熱の砂漠で奴隷として働かせたり、メンフィスの振る舞いに腹を立て、会いたくないといったキャロルの腕を無理やりつかみ骨折させたりと悪役キャラでしかありえないようなエピソードも多く、メンフィスの横暴な態度や乱暴さは現代なら立派なDVです。しかしメンフィスは古代エジプトで神の子、神の化身とも崇められるファラオ、その絶大なる権力とファラオとしての責任を果たすためには雄々しく勇敢なファラオであり続ける必要もあります。

 究極の俺様キャラであるメンフィスがキャロルを愛したことで葛藤しつつも徐々に器の大きなファラオに成長していくところと、現代の知識をフル活用して窮地を脱し、あらゆる困難をあきらめずにメンフィスとの愛を貫く健気なキャロルの姿は、何度読み返しても飽きることのない面白さを与えてくれます。

 弟であるメンフィスを深く愛するあまりキャロルの命を執拗に狙う女王アイシス、キャロルを深く愛し、なんとしても自分の妻にと望む敵国ヒッタイトの王子イズミルとのかかわりなど、サブキャラも個性的かつ魅力的で曲者ぞろいのこの漫画。ミュージカルではどのように描かれるのか、果たしていつ最終回を迎えるのか、今後の展開にも注目です。

文=朝倉志保