凍ったグラスに注ぐとビールは不味くなる!「至福の一杯」を飲むための「3度注ぎ」とビールの基本【保存版】
更新日:2016/8/22
今年も夏がやってきた。ビールが美味い季節だ。さっそくビアガーデンを予約している方もいるだろう。読者には、今年はおいしいビールを飲んでいただきたい。そこで『ビールはゆっくり飲みなさい』(藤原ヒロユキ/日本経済新聞出版社)を紹介したい。
店の味を引き出す「3度注ぎ」
ビアガーデンやビアホールで飲むビールは本当においしい。「お店においてあるビールは、市販のビールとは違う」と思う方もいるだろう。ところが、醸造所では、樽につめるビールと缶やビンにつめるビールは作り分けていない。コンビニで買う「生ビール」もビアガーデンで飲む「生ビール」も中身は一緒だったのだ。
ならば、なぜ味の違いを感じるのか。それは、ビールの注ぎ方だという。筆者曰く、「泡の口当たりの良さ」と「適度に炭酸発散されている」ため、お店のビールはおいしいのだとか。そこで実践したいのが「3度注ぎ」だ。
その方法はこのような感じだ。
1回目はグラスから高く離れた位置からビールを注ぎ、グラスのほとんどを泡で埋め尽くしてしまう。そして2分間放置する。ビールと泡の分量が1:1ぐらいになったら、今度はビールをグラスの縁からそーっと注ぐ。グラスの縁から泡が1センチほど盛り上がったら、注ぐのを止めて再び2分間放置。泡が落ち着いたら、いよいよ3度目。泡の下にビールを滑り込ませるようにして、泡を持ち上げていく。グラスの縁から2センチ以上泡が盛り上がったら完成だ。
この方法でできたクリーミーな泡と適度に発散された炭酸のおかげで、お店で飲むようなビールが体験できるとか。この「3度注ぎ」は、キリンビールも科学的に検証しており、ビールの香りと苦みを存分に味わうことができるという。
本書ではこの他にも、炭酸の刺激鮮烈な「1度注ぎ」、スムーズな喉越しになる「トルネード注ぎ」もあわせて紹介している。
ピルスナー=ビールではない!
「ビール離れ」という言葉を聞く日本だが、世界的に見ればビール人気は高まってきているという。その理由は、ビールの多彩さにある。日本でいうビールは「透明な黄金色で、炭酸がシュワシュワしていて…」というイメージが先行しがちだが、これは「ピルスナー」と呼ばれる種類のビールに過ぎない。日本ではこの「ピルスナー」が定着してしまい、「キンキンに冷やしてゴクゴク一気に飲む、とりあえずの一杯」として当たり前になった。しかし、本当のビールの世界はこんなものではなく、「色」「香り」「味わい」「アルコール度数」などのバリエーションが豊富だ。今回は基本の8種類を紹介したい。
(1)『IPA(アイピーエー)』…ポップの香りと苦みが印象的
(2)『ピルスナー』…すっきりとしたシャープな味わい
(3)『ヴァイツェン』…苦みが少なくフルーティー
(4)『デュンクル』…香ばしく軽やかで、ほどよく楽しめる
(5)『スタウト』…ブラックコーヒーの香りと苦みとドライな喉越し
(6)『シュバルツ』…重たくなく、スイスイとスムーズに飲める
(7)『ホワイトエール』…爽やかな柑橘系の酸味とスパイシーな香り
(8)『ボック』…モルトの甘みと香ばしさとリッチな味わい
そしてこれだけではない。ビールにも料理との相性「ペアリング」があるのだ。簡単に例を並べてみよう。
・苦み+苦みを意識して、山菜+ポップの苦みが効いたアメリカンIPA
・色みを意識して、焼きそばに濃色ビール、うどんに淡色ビール
・国と発祥地を意識して、ドイツで生まれたヴァイツェンと白ソーセージ
・味の対比を意識して、辛みの効いたエスニック料理+甘みのあるヴィエナスライル・ラガー
このような感じだ。この奥深さは並の日本人にはできないだろう。しかし、これを習得すると、今年のビアホールでは、どや顔でビールを飲むことができる。
ビール愛好家になりたい人がやめるべきこと
最後にどうしてもこれだけは言いたい。おいしいビールを飲むための心得だ。「ビールをゴクゴク一気に飲むのはもったいない」と筆者は断言している。単に「喉を通る炭酸の刺激を楽しんでいるだけ」だからだ。先述の通り、ビールには様々な種類と楽しみ方がある。種類によって違う「香り」や「味わい」を楽しむべきところを、ゴクゴク飲み干すのはどうなのかと断罪しているのだ。
さらに「キンキンに冷やす」のも良くないという。飲み物はどれも温度が低くなるほど味が分かりづらくなる。コーラがいい例だ。つまり、キンキンに冷やすとビールの味わいが感じ取れなくなるのだ。また、凍ったグラスにビールを注ぐのもご法度。ビールに霜の水分が入るので絶対にやめてほしい 。「ピルスナー」を飲むときの適温は5℃から9℃だとか。
今回は残念なことに、本書にあるビールの魅力や奥深い世界のほんの一部しかお伝えできなかった。この記事を読んでも、ビールの世界に片足さえ突っ込んでいないのだ。今年も浴びるほどビールを飲みたいと思うが、本書にあった「たしなみ」は意識したいところである。
文=いのうえゆきひろ