下町のトップ校で実践! 子どもの学力を伸ばし、変化の大きい時代を生き抜く力を養う「教えない」教育法
公開日:2016/7/29
教育界で今、「アクティブ・ラーニング」がホットなキーワードとして注目されている。生徒が主体となって学ぶ「アクティブ・ラーニング」の考え方や手法は、「勉強しなさい」と言ってもしない子どもが、進んで家庭学習をするヒントになるかもしれない。
『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(山本崇雄/日経BP社)は、いち早く「アクティブ・ラーニング」に着目した英語教師である著者が、自身の受け持つ東京都立両国高校の授業を通した実践をもとに、「アクティブ・ラーニング」の効果を紹介している。
教員が一方向的に講義をするのではなく、生徒が能動的に授業に参加する教授・学習法である「アクティブ・ラーニング」は、次期の「学習指導要領」で提唱される見込みだ。ところで、なぜ「アクティブ・ラーニング」が必要なのだろうか。
人工知能の進化がすさまじい。日本では、10~20年以内に現在の仕事の約49%が自動化可能で、例えば鉄道の運転士、会計・経理事務職、税理士、郵便窓口といった職業が自動化に置き換わる可能性が高いという分析がある。人工知能に仕事を奪われる社会を生き抜くために、これからの世代はゼロから仕事をつくる力が求められる。「アクティブ・ラーニング」が、その解決策になると見込まれている。
「アクティブ・ラーニング」というと、ペアワークやグループワーク、ディスカッションやディベートといった学習形態がまずイメージされるが、目的は「自立した学習者を育てること」。教師は授業で「知識を分かりやすく教える」のではなく、ファシリテーターとして「問題解決の方法を支援する」ことに主眼を置く。例えば、音読をペアやグループで行なう場合、お互いに相手の音読を聞きながら、意味が分からない文章があったときに、相手に質問したり確認したりして、共に解を求める。生徒だけで解決できないときだけ、教師が支援する。
本書によると、英語の授業で生徒からの一番多い質問は、「先生、◯◯の意味は何ですか?」といった単語や文の意味を聞いてくるもの。そんなときは、どう答えるとよいのだろうか。本書は次のように答えるという。
“I’m not your dictionary.”「私は君の“辞書”ではありません」
答えをすぐに教えたほうが効率的かもしれないが、学習に対する生徒の自立を妨げる。その代わり、前述のようにそれとなく「代わりの解決の方法」を示す。この方法は、家庭学習でも生かせるのではないだろうか。
本書は、「アクティブ・ラーニング」に則った授業を、肯定的に「教えない授業」と表現している。「放任教育」と異なるのは、教師が“よく見守っている”こと。見守ることで生徒が抱えている課題の発見に繋がり、すぐ相談に乗ることができる。生徒の人間関係も見えてくる。細かいフィードバックが可能になり、「そこまで見てくれていたのか」という安心感を与えることもできる。
子どもに将来を生き抜く力を備えさせてやりたいのは、どの親も願うこと。親の温かい見守りと共に、家庭でも「アクティブ・ラーニング」の考え方や手法を取り入れてみてはいかがだろうか。
文=ルートつつみ