“日本の本当の現実”を知ることで、この先も日本で生き抜くための知恵が見えてくる! 後悔しない生き方をするためにいま必要なこと
公開日:2016/8/18
他国と比べて治安が良く、目立った貧困も食糧難もない日本はなんて幸せな国なのだろう。しかしそれは、これからも日本という国で生き抜いていくためには今すぐ捨てたほうがいい考えである。
『あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら』(江上 治/経済界)には、私たちが思いもしないほど残酷な今の日本の現状が記されている。
まず第1章で展開されているのは、もしこの日本が総人口わずか100人の村だったらという仮説だ。“じつはこの村は、いま存在していることが不思議なくらい借金まみれです。”“この村が捨てている食べものの量は、この村で作っている米の量とほぼ同じです。”“この村では、自殺する人が後をたちません。”とても日本とは思えないほど厳しく過酷な状況である。しかしこの状況こそが、今の日本で実際に起きている問題の一部なのだ。
第2章から、著者は具体的な数字を示して現在の日本がどれほど残酷な環境であるかを説明している。まず著者が指摘しているのは、出生率低下に伴う働き手(15~64歳)の減少、そして止まらない高齢化率の問題である。驚くことに、2014年から2015年の1年間で、21万人の総人口の減少に対しなんと117万人もの働き手の減少が起こっている。加えて、総人口の減少が著しい中で高齢者の割合はますます大きくなり、2060年には4人に1人が75歳以上の社会になるというデータすらある。一方で働き手は減り続けるため、2022年には2人で1人の高齢者を扶養することになると著者は述べている。社会全体の高齢化と深刻な少子化は現在でもよく耳にする社会問題だ。若者にかかる負担は増え続け、高齢者は気兼ねなく生活することが難しくなる。人口の減少が続く限り、そういった負の連鎖は止まらないのである。
次に挙げられているのは、日本が抱える莫大な額の借金だ。国民の稼ぎの2倍以上の借金がこの国を圧迫し、毎日700億円ずつ借金が増加しているともいわれている。1人あたりの借金負担額はなんと815万5000円。目には見えなくとも日本はこれほどまでに大きな借金を抱え、それにも拘らず生産量の3分の1の量にあたる食べものを廃棄し、身の丈に合わない生活を送っている。3分の1の世帯は貯金がゼロという衝撃的な結果もあり、6人に1人の子どもが貧困層にある状況だ。高齢者の増加とは反対に生活保護予算はますます削られ、日本は今、信じられないほどの厳しい未来を迎えようとしているのである。
自分(ヒト)・お金(カネ)・人間関係(カンケイ)。この3つこそが、著者がこの残酷な状況にある日本で生きていくうえで必要だと述べている3つの資本である。そして意外にも、著者がカネにおいているウエイトは大きくない。経済的に苦しい今だからこそ、著者はそれ以外の部分で生き抜くための武器を作るべきだという。“金儲けのうまい人は、無一文になっても、自分自身という財産を持っている”“人生、健康ならばそれほどお金は必要ない”“人間関係資本を豊かに持つ人は強い”もちろん、万が一のために貯金をすることは大切なことだ。しかし正しい稼ぎ方を知らなければ、ただやみくもに働き、ひたすら金に執着するような誤った道に進んでしまいかねない。自分自身を磨き、人間関係を豊かにし、人を助け、そして助けられる。このつながりが明日の自分の未来をつくり、なにかビジネスを始めるときなど、決して自分1人の力ではたどり着けないほどの高みを目指すことができるようになる。社会全体が不安定な今、信じられるのは自分自身と、そして自分自身で築きあげてきた人間関係による助け合いなのだ。
現在の、そしてこれからの日本の厳しい現実をきちんと理解することで、危機感を持つと同時に対策を立てられるようになる。自分だけでなく家族の人生のためにも、この国の本当の姿を知り、これからの生き方を改めて見直してみてはどうだろうか。
文=ハル