【今週の大人センテンス】解散を発表したSMAP5人のコメントに見る大人力
公開日:2016/8/19
巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。
第20回 言い方の違いから各自の本音を読み取る
「このような結果に至った事をお許しください。申し訳…ありませんでした…」by中居正広
【センテンスの生い立ち】
2016年8月13日深夜、ジャニーズ事務所がマスコミ各社に送ったファックスで「SMAPは2016年12月31日を持ちまして解散させていただくことになりました」と発表。グループ結成から28年、CDデビューから25年にわたって絶大な人気を集め続けた“国民的アイドルグループ”は、その歴史に区切りをつけることとなった。8月14日付の各スポーツ紙は、5人のコメントを掲載。そこには解散に対するそれぞれの思いがにじんでいる。
【3つの大人ポイント】
・5人それぞれのグループ解散に対する思いが感じられる
・背後の「大人の事情」を想像する楽しみを提供している
・全員がファンやスタッフへの感謝とお詫びを述べている
突然の発表ではありましたが、驚くと同時に「ああ、やっぱりこうなったか」と思った人も多かったことでしょう。長年にわたって絶大な人気を集め続け、「国民的アイドルグループ」と呼ばれる存在だったSMAPが、8月14日に解散を発表。ファンはもちろん、とくにファンでも何でもなかった人たちも含めて、世の中を騒然とさせています。
今年1月にも「分裂騒動」があり、けっこうな大騒ぎになりました。そのときは解散は回避されましたが、なんだかすっきりしない雰囲気は続いていて、今回の発表につながります。好き嫌いは別として、25年も超人気グループであり続けたことや、メンバーのほとんどが40代になってもアイドルであり続けていることなど、驚きの存在であるのは間違いありません。ジャニーズ事務所の発表によると、これからも5人は事務所に所属したまま、個人としての活動を続けていくとか。
手回しがいいというかさすがというか、深夜に解散が発表されたにもかかわらず、翌朝のスポーツ各紙にはメンバー5人のコメントが掲載されています。解散という道を選んだことに対しては、メンバーそれぞれ言いたいこともたくさんあるでしょう。ただ、ある意味「オフィシャル」なコメントで、軽々しく本音を漏らすわけにはいきません。たくさんの制約がある中でのコメントですが、そこには各自の思いがにじみ出ています。
リーダーに敬意を表して、見出しには中居正広の言葉を引用しましたが、5人のコメントそれぞれに大人力があふれているし、解散に対する思いの違いが読み取れます。中居の場合、「申し訳…ありませんでした…」と二ヵ所に「…」をはさむことによって、言い尽くせない思いの大きさを表現し、今は言えない事情の存在をにおわせてくれていると言えるでしょう。全体的に、できれば解散したくなかった気持ちが行間からにじみ出ています。
5人のコメント全文は、こちら。
中居「お許し…」木村「無念」/SMAP5人コメ(「日刊スポーツ」8月14日付)
いっぽう、稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾のコメントからは、言い方は微妙に違いますが、解散を残念に思いつつも、どこかスッキリした気配が伺えます。5人の中で異彩を放っていたのが、木村拓哉のコメント。解散に対するスタンスや考え方の違い、ひいてはメンバー内の人間関係のややこしさまで伺える気がしないでもありません。以下、全文を引用します。
「この度の『グループ解散』に関して、正直なところ本当に無念です。でも、25周年のライブもグループ活動も5人揃わなければ何も出来ないので、呑み込むしかないのが現状です。沢山の気持ちで支えて下さったファンの方々、スタッフの皆さんを無視して『解散』と言う本当に情け無い結果になってしまいました。今は言葉が上手く見つかりません」
「本当に無念」「呑み込むしかない」「無視して」「本当に情け無い結果」といった強い言葉が並んでいて、それこそ解散することになった無念さがひしひしと感じられます。1月の分裂騒動の際には、木村と他のメンバーとの確執が、たくさんの尾ひれはひれとともに報じられました。今回のコメントの色合いの違いに関しても、そこから伺える裏事情について、すでにいろんな憶測や訳知り顔の解説が飛び交っています。
みなさんいい大人だし、10代からいっしょにやっているんですから、そりゃいろいろあるでしょう。そこはまあ、当人たちの問題です。ただ、多くの人の興味を集めて話題を提供するのも、芸能人としての大切な役割。それに乗っかって面白がるかどうかはさておき、背後にたっぷりありそうな「大人の事情」を想像する楽しみを提供しているところも、トップアイドルグループとしての貫録の大人力と言えるでしょう。また、メンバー全員がそれぞれの表現で、ファンやスタッフへのお礼と感謝をきっちり述べているのもさすがです。
5人は、今後もきっと大いに活躍してくれることでしょう。解散によって5人の仕事や言動にどんな変化が訪れるのか、見られ方や立ち位置がどう変わるのか、そのあたりも興味をそそられます。もしかしたら、事務所を辞めるだのなんだの、誰が誰の悪口を言っただの何だの、ゴシップ的な話題もたくさん出てくるかもしれません。自分のニーズに応じて、スルーしたり楽しんだりさせてもらいましょう。それが芸能の世界との大人な距離感です。
【今週の大人の教訓】
「くだらない」と切り捨てると、逆に底が浅そうに見えるかも
文=citrus石原壮一郎