米国でも大ヒット!『フルーツバスケット』次世代物語がスタート! あの”草摩一族”が帰ってきた!

マンガ

公開日:2016/8/20

 過度に卑屈になるのは、まわりを心配させることもあるし、傷つけてしまうこともある。――なんてことに気づけず、思いがからまわりしてしまうのが思春期。人とうまくやれなくて、苦い想いをした経験があればなおさら。『フルーツバスケットanother』(高屋奈月/白泉社)の主人公・三苫彩葉もまた、過去のトラウマから人と関わることを恐れてしまう女の子。そんな彼女を広い世界に引っ張り出して、他人と関わり合う楽しさと難しさを教えてくれるのが、同じ高校に通う賑やかで個性的な一族・草摩の面々だ。何の因果か、草摩はじめ&睦生の所属する生徒会に参加することになった彼女は、少しずつ顔をあげて笑顔をとりもどしていく。

 と、はじめて高屋作品を知る方のためあらすじを語ってみたが、タイトルからもわかるように本作はあの『フルーツバスケット』の新シリーズ。異性に抱きつかれると動物に変身してしまう“十二支の呪い”に縛られた草摩一族を、両親を亡くしひとりでたくましく生きる少女・本田透が、その尊いまでの優しさと強さで解放していくファンタジーストーリーは、アメリカでもミリオンセラーの大ヒットとなった日本を代表する人気マンガのひとつだ。涙なしでは語れないラストは、そのあまりの完璧さに続きなどは望めないだろうと思っていたが、このたびファン待望の次世代編開幕とあいなった。いやあもう、うれしすぎるよね……! おかえりなさいと世界中に向かって叫びたい!

 いまのところ親世代は名前以外で登場していないが、子供たちの様子からなんとなくうかがいしれると思わずにやにやしてしまう。あ、これはあの人たちの子供だな、などと想像しながら読むのも楽しい。子供たちがまた、そっくりだけどちょっとずつ違うのもときめくところだ。各話のあいだに書きおろしでおまけマンガが挿入されているのだが、こちらはより前作ファンを意識してか、本編以上にお楽しみがいっぱいだ(正直おまけが読めるだけでもうれしすぎる)。

advertisement

 とはいえ冒頭に書いたとおり、本作はあくまで、心に傷を背負った少女・彩葉が主人公の物語。草摩一族となにやら因縁があるらしいぞ、ということはうかがいしれるものの、彼女自身に自覚はなし。「この人たちはいったいなんなんだ」と戸惑う彩葉の視点で進むので、はじめての人にも読みやすいつくりとなっている。熱狂的に前作が好きだった身としては「続きか~」などと敬遠せずに、まずは『フルバナ』(と略すらしい)から入り、ぜひとも遡って前作を読んでみてほしいところ。

 高屋作品の特徴は、些細なことで傷つき立ち止まってしまう心の柔らかい部分に、徹底的に寄り添って癒してくれるところ。停滞をよしとはしない。だけど無理に押し出したりもしない。そっと心をあるべき方向に誘ってくれる。人を傷つけるのは人だけど、癒すのもまた人なのだと教えてくれるのだ。対人関係のトラウマだけでなく、母子関係にもなにやら闇を抱えていそうな彩葉。彼女が草摩一族とともにどんな未来を紡いでいくのか、期待大の作品だ。

文=立花もも