なぜ引っ張りだこ? 池上彰の情報活用術のすべて
公開日:2016/8/22
ニュースをわかりやすく解説してくれる人といえば池上彰氏だ。池上氏の人気は高い。各テレビ局の特番を度々受け持ち、新聞や雑誌の連載も数多く抱えている。わ かりやすい解説が魅力とはいえ、インターネットで簡単に情報を調べられる昨今において、なぜこんなにも引っ張りだこなのか。
その理由のひとつに、私たちが情報の集め方や読み方をいまひとつわ かっておらず、解釈を人任せにしている現状がある。情報を得たところで身につかない。情報があふれる時代だからこそ、情報を取捨選択し活用していく力が必要なのだ。
本書『情報を活かす力』(池上彰/PHP研究所)では、情報収集術、情報整理術、ニュースの読み解き方、情報発信術など、池上氏の情報の活かし方がわ かりやすく公開されている。
まずは情報活用力の高め方について。池上氏の常套句に「いい質問ですね」があるが、誰かに説明するつもりで情報収集していくことが最大の秘訣のようだ。「インプットというのは、誰かに説明(=アウトプット)しようとして初めて、自分の頭の中で整理されて身になる」のが情報というもの。情報を得てわかった気になってはいけない。
例えば、ヨーロッパにシリア難民が押し寄せて問題になっているが、急激に増えているのは2015年夏ごろから。なぜ急に増えたのか、調べてみると「スマホが普及したから」という意外な事実がある。この視点でさらに見ていくと、彼らは従来の難民のイメージとはずいぶん違うことがわ かってくる。
情報収集はどうするか。情報源は無限だが、全部を追っている時間などあるわけがない。効率的な情報収集のやり方とは何なのだろう。
まずはメディアの特性を知ったうえで利用方法を考えましょう、と池上氏は提案する。例として、同じテレビのニュース番組でも放送時間で性格は異なるのだそうだ。NHKの場合、朝の『おはよう日本』、夜の『ニュース7』『ニュースウオッチ9』の3つがニュース番組の柱。『ニュース7』ではその日の大きなニュースをコンパクトにまとめて伝え、『ニュースウオッチ9』ではそれらの分析や解説を行い、『おはよう日本』では深夜に入ってきた最新の海外ニュースを伝える。このように同じ局のニュース番組でも特色が分かれるのだ。
また、ネットで情報検索する場合の注意点もある。情報収集源をネットだけにしてしまうと、自分と異なる意見や自分が想像もつかないような視点の意見はなかなか目に入らなくなってしまうもの。情報の偏りや視野を狭くする危険を回避するためにも、新聞や雑誌、本などで意識的に自分と違う意見にも目を通すことが大切、と強調している。
私たちは日々ありあまるほどの情報に接している。だが、その活用ができているとはいい難く、むしろ情報が多すぎることで得ることに満足し、その意味を考えることを放棄してしまっていはしないだろうか。
本書では情報の活用のみならず本質を見極める目を養うための方法を、池上氏のテレビ番組と同様、私たちに寄り添ってじっくり教えてくれる。この姿勢が、池上氏の情報を活かす力の原点のようでもある。
文=高橋輝実