【ダ・ヴィンチ2016年10月号】吉田修一特集番外編

特集番外編2

更新日:2016/9/7

【ダ・ヴィンチ2016年10月号】吉田修一特集番外編

今ならまだ間に合います

編集K

まずはじめに書かねばならないのが、映画『怒り』はとんでもない作品だということ。
3本は映画が作れそうなほど豪華なキャスト、スタッフが限られた時間の中で、これでもかともがき苦しむ。
プロの熟練した技術で“作る”のではなく、一人の人間として現場で悩み、生きること。
そうして生み出されたシーンの数々は時にカットされ、順番を入れ替えられ、やり直しを命じられる。
真剣にぶつかりあえばその分だけ、映画作りは苦しい。
まさに人生そのものだ。

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映画も小説もそうだが、出来上がった作品の中で、登場人物たちの人生はやり直しがきかないように思える。
しかしこの映画を観たとき、私の人生は今から始まるんだと感じた。
やり場のない感情、愛おしい数々の命が2時間強の短い時間に凝縮されている。
本当にお得な映画である。

さて。今回の特集は映画『怒り』を入り口に、渡辺謙、妻夫木聡、李相日監督ら、日本映画界を代表する面々に吉田文学について語って頂いた。
クリエイター同士が、凌ぎを削るような雄々しい誌面となった(色が黒い)。
吉田修一のプライベートを知る友人たちにも話を聞いた。
酒場での姿、好対照な二匹の愛猫、肉ばかり並ぶ赤々とした食卓……。
吉田について語る彼らはじつに楽しそうで、母のように温かい。
さらに吉田と同じく、ノンジャンルで活躍する小説家・朝井リョウ。
初めての対談で、シンプルに悩みをぶつけた。必見である。
最後を飾るのは、故郷・長崎の海について、懐かしむような語りから始まる1万字インタビューだ。

ライター・吉田大助氏、五十嵐大氏、カメラマン・江森康之氏の尽力で、久しぶりに男くさい誌面となりました。

ぜひご一読ください。