「人前で話すことが苦手」を克服! 誰でも話すスキルが身につく「TED流プレゼン術」とは?
公開日:2016/8/30
制限時間18分。演台もなく、話し手のすべてが聞き手から見えるステージで、原稿のないまま、登壇者はさまざまな手法を使って驚くようなアイデアや経験を話す。その様子を撮影した動画は、TEDトークとして配信。年間10億回を超える再生回数となり、世界中の人がその話を視聴する。テクノロジー、エンタテインメント、デザインの3つの領域で、「広める価値のあるアイデア」を共有するためのカンファレンス、それがTEDである。革新的なアイデアを紹介する登壇者たちトークはスーパープレゼンテーションとも呼ばれ、多くの人たちの好奇心を刺激し、感動的なトークの数々を世界中に拡散してきた。
このTED代表自らが書いた公式ガイドブックが『TED TALKS スーパープレゼンを学ぶTED公式ガイド』(クリス・アンダーソン:著、関美和:訳/日経BP社)である。「優れたアイデアを世に出せば、それは瞬く間に世界中に広がり、数百万人の心に焼き付けられる」時代になったからこそ、本書はビジネスや教育のような場でも使えるパブリックスピーキング術を身につけることを目指している。
実はパブリックスピーキングの能力は、生まれつきの才能ではないという。誰もが自分にあったやり方を見つければ、上手に話す技術を身につけることができる。しかもこうしたプレゼンテーション・リテラシーは、自分が何者で何を大切にしているかを人に伝えるために最も効果的なツールだという。そうなると人前で話すことが苦手で避け続けていた人も、あとは勇気を出して実践してみるだけだ。
そこで本書では、「人前で話すことにまったく自信のないあなたも、自分を変えるためにできること」として、「つながる、ストーリーを語る」といった5つのツールを使いながら話す準備をすること。また実際にTEDに登壇した数々のスピーカーたちのエピソードを交えながら、本番に備えるための原稿やメンタルの準備までが事細かに説明されている。TEDの登壇者たちのように、スタンディングオベーションが沸き起こるスピーチに一歩でも近づきたい人は必見だ。
インターネットを通じて、世界がますますつながりを増す現代。私たち一人ひとりが「アイデアを誰かに伝えるスキルは、今以上にこれから絶対に欠かせない」時代になった。そんなパブリックスピーキング革命が到来した現代は、自分の専門ではない知識を多くの人たちが知ることで、人々は刺激され、それによって世界と自分の役割をより深く理解できるようになるという。これまで通りはっきりした意思表示をせず沈黙が得意、しかも人前で話すことが苦手と避けているままでは、ますます世界から取り残されるばかりであろう。
本書は、翻訳した関美和さんのこんな後書きで締めくくられている。「あの人気のTEDスピーカーたちが、どれほどの時間をかけてトークを準備し、練習し、心を込めてそれを届けたのかを読むにつけ、彼らのアイデアがさらに大切な贈り物に思えてきた。世の中のスピーチ嫌いのみなさんにこそ、この本をおすすめしたい」。
文=富田チヤコ