ステージに立つことが許されるのは、ほんの一握りだけ……。努力ではどうにもならない「芸能」の世界を描く『かげきしょうじょ!!』

マンガ

公開日:2016/9/5


『かげきしょうじょ!!』(斉木久美子/白泉社)

 芸能の世界というものは、非常に特殊だ。そこを夢見る者たちの中から、きらびやかなステージに立つことを許されるのは、ほんの一握りだけ。必要とされるのは、実力、才能、そして運。いくら努力しているといっても、必ずしもそれが実を結ぶわけではない、非情な世界である。

 そんな芸能の世界を舞台にし、夢に向かう少女たちをキラキラした筆致で描いているマンガがある。それが『かげきしょうじょ!!』(斉木久美子/白泉社)だ。

 本作の舞台となるのは、未婚の女子だけが入学を許されるという、伝統を重んじた歌劇音楽学校。そこへ入学してくるのは、もちろん精鋭揃い。しかも、女同士。こりゃあ火花がバチバチ飛ばないはずがない。

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 ところが、本作はとても爽やかさを感じさせる読後感なのだ。それは、主人公である渡辺さらさのあっけらかんとしたキャラクターによるところが大きいだろう。彼女からすると、伝統や規律なんて大した問題ではない。自分がやりたいこと、自分の演じたいことに対して、ただ一直線に突き進むだけなのだ。その態度に周囲は呆れつつも、引っ張られるように巻き込まれていく。

 それは、もう一人の主人公・奈良田愛も同様。元国民的アイドル「JPX48」のメンバーとして、すでに芸能活動をしていた彼女は、人との距離感がうまくつかめない。周囲からも自然と浮いてしまっている。しかし、その壁を破ったのが、さらさなのだ。そうして、友達になった学園の異端児二人組。彼女たちが、どのように新風を巻き起こしていくのか。それが本作の見どころである。

 そして、9月5日(月)に発売された第2巻では、もう一歩踏み込んだ物語が描かれている。それは、さらさが抱えている過去について。猪突猛進、天然、なにも考えていない、そんな印象が強いさらさだが、実は過去に演劇における非情にショックなできごとを経験しているのだ。そのキーパーソンになるのが、幼なじみである歌舞伎役者・白川暁也。幼い頃から演劇の世界に身を置いていた2人に、いったいなにがあったのか。それは本作で確かめてみてもらいたい。

 上述した通り、芸能の世界は非情に特殊で、ある種の残酷さをも伴う世界である。努力だけではどうにもならない現実が、そこには確実にある。けれど、だからといって諦められない人種がいるのも事実。さらさもそういった種類の人間だ。そして、奇跡というものは、きっとそういう人間のもとに起きるのだろう。この先、さらさは何度も何度も挫折する。しかし、そのたびに立ち上がろうとする姿からは、勇気がもらえるはずだ。

文=五十嵐 大

■『かげきしょうじょ!!』1巻レビューはこちら