危ないのはそこそこの生活をしている世帯!? 「老後破産」「老後貧乏」にならないために知っておきたいこと
更新日:2016/10/31
老後に不安を感じている若い世代は少なくないだろう。年金は期待できないから貯蓄で何とかしたいと考えている人もけっこういるはずだ。しかし、ただ節約して貯蓄を増やすだけで大丈夫なのだろうか? そこで、今回は国の給付制度や相談窓口もとことん利用し尽くす方法を紹介している『「なんとかなる」ではどうにもならない定年後のお金の教科書』(山中伸枝/クロスメディア・パブリッシング)を取り上げる。
「老後破産」「老後貧乏」も他人事ではない
「老後破産」や「老後貧乏」という言葉を耳にしたことはないだろうか? もし耳にしたことがあるなら、そのときどう感じたか思い出してみよう。目の前に現実を突きつけられたにもかかわらず「なんとかなるだろう」と思ったのだとしたら要注意だ。
年金が今のように出なくなるかもしれないということや、定年から年金が支給されるまでにタイムラグがあることに対して危機感を覚えている人はいても、年金だけでは暮らしていけないということにどれだけの人が気付いているのだろうか。現在でも、生活保護受給者の半数ほどは高齢者世帯。つまり、多くの高齢者世帯では、贅沢をしていないにもかかわらず赤字家計なのだ。だから、老後破産や老後貧乏は決して他人事だと思ってはいけない。まずは、老後の生活にどれくらいのお金がかかるかを知り、老後は収入と支出が逆転することを確認する必要がある。
危ないのはそこそこの生活をしている世帯
老後にお金で苦労することになるのは、実は初めから収入が少なかった人ではない。もちろん、蓄えが少なければ苦労をすることになるのだが、少ない収入で生活する術を身に付けているから、苦しいながらもそれなりの生活をすることができる。実際、老後の生活に困ることになるのは、定年までそこそこの収入があって、お金に不安を持っていなかった世帯だという。そういう人は、老後の生活が激変することをイメージしないまま現実の厳しさを体験することになるため、うまく対応できないことが多いのだ。
例えば、老後の収入が年間250円万程度まで落ち込む場合、年収300万円だった人の生活はほとんど変わらないが、年収500万円だった人は半分、750万円だった人は3分の1の収入でやりくりすることになる。人は一旦上げた生活レベルはなかなか下げられないものだから、このギャップを埋めるためにもお金が必要になるのだ。
ただ生活できるだけの老後は誰も望んでいない
年金はあてにならないなどとよく言うが、実際は約10年受け取れば元が取れるハイリターンな投資ともいえる。それなのに年金が足りないと感じるのは、年金だけではそれまでの生活レベルを維持できないからだ。
しかし、超低金利の現代、ただ貯蓄するだけではお金が増えない。となると、早いうちからの投資をしてお金を増やすようにすることが必要なのだが、なんの知識も持たずに投資を始めると、元本を割る危険性がある。この本では、投資の基礎知識や、注意点についても細かく解説されているから、リスクを減らして老後の資金計画を立てる助けにもなるはずだ。
資金計画を邪魔する「なんとかなる」という考え
現実問題として老後にいくらのお金がかかるかがわかれば、資金計画を立てられる。だから、老後に毎月いくらの生活費がかかるのか、定期的にいくらの収入があるのかを確認する必要がある。しかし、実際には老後のために貯金をしている世帯でも、どれだけの金額が必要かを考えず、漠然と貯金していることが多い。いくら若いうちから貯金をしていても、具体的な金額を目標に貯めなければ、せっかく貯めたのに足りないということが起こり得る。
実は、日本には、数々の優遇措置や給付があるのだが、それを利用することなく損している人がとても多い。と言うのも、日本の税制優遇や給付は自己申請しなければもらえないからだ。この本では、自己申請の必要な優遇措置や給付を受ける方法についても併せて解説がある。損をせずに老後のお金を準備するためにはぜひ目を通しておきたい1冊だ。
文=大石みずき