クセのある部下の力も引き出せる! スラムダンクから学ぶ人材育成術

ビジネス

公開日:2016/9/5

『「SLAM DUNK」に学ぶ「癖のある部下」の活用術』(小林 奨/彩図社)

 人を育てることは難しい。家庭ではなく職場での話だ。部下が何人かいれば、性格が違うのは当然だが、同じことを教えても理解度が違い、取り掛かるスピードも違う。そのうえ、仕事に対する姿勢も違うのだから、どう扱ったら力を発揮してくれるかがわかりにくい。そんなとき、相手の性格ごとにどう扱ったらよいのかを教えてくれるお手本のようなものがあったら助かるのではないだろうか? そこで、今回は『「SLAM DUNK」に学ぶ「癖のある部下」の活用術』(小林 奨/彩図社)を紹介する。

個性の強い主要キャラ6人を部下に見立てる

 スラムダンクは、主要キャラクターたちの個性がとにかく強い。だから、そんな彼らが試行錯誤しながら強いバスケットボールチームとして成長していく様子が、これまでも名言集や哲学書の題材として何度も取り上げられてきた。しかし、この本では上司がやる気のない部下や癖のある部下をどうやってその気にさせ、力を発揮させるかといった「人材育成」の視点からスラムダンクを取り上げている。そのため、部下をこのマンガの主要キャラクター「桜木花道」「流川楓」「宮城リョータ」「三井寿」「木暮公延」「赤木剛憲」の6タイプに分け、その力の引き出し方を解説している。

部下をただ6パターンに分けただけじゃない

 マンガやアニメを題材にしたこの手の本は、キャラクターごとに性格やエピソードを紹介することはあっても、更に細かく分けて語ることは少ない。しかし、この本ではただ6つにタイプ分けしただけでなく、それぞれのキャラクターの特徴的な性格を4~6つほどピックアップして、それらが最もよく表れているエピソードを例に、上司としての対処法を紹介している。

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 それはなぜか。個性が強すぎるスラムダンクのキャラクター6人にピッタリ当てはまるような部下は、実際の場面にはほとんどいないからだろう。いくら桜木っぽい部下がいたとしても、ある一面は桜木なのにある一面は流川、そしてまたある一面はリョータというのが普通だ。そこで、各キャラクターを次のように30のタイプに分けた点が活きてくる。

【桜木花道タイプ】
・物事にやる気を見せないタイプ
・指示を待てずに勝手に行動するタイプ
・集中力がなくミスを連発するタイプ
・同じ失敗を繰り返すタイプ
・飽きっぽく長続きしないタイプ
・人の意見を聞かないタイプ

【流川楓タイプ】
・負けず嫌いで言われたら言い返すタイプ
・攻撃的な表現をしてしまうタイプ
・上から目線と誤解されやすいタイプ
・独断専行して大失敗してしまうタイプ
・頼んだことをやってくれないタイプ
・基本的な礼儀を理解していないタイプ

【宮城リョータタイプ】
・理解しがたい行動を取るタイプ
・悩みを1人で抱え込むタイプ
・要領があまり良くないタイプ
・いざというときにしり込みするタイプ
・得意不得意の差が大きいタイプ

【三井寿タイプ】
・自分が中心でないと我慢できないタイプ
・物事を途中で投げ出してしまうタイプ
・過去の失敗をいつまでも引きずるタイプ
・自信を持つことが苦手なタイプ

【木暮公延タイプ】
・周囲に振り回されてしまうタイプ
・突然キレてしまうことがあるタイプ
・プレッシャーに弱いタイプ
・なぜか過小評価されてしまうタイプ
・感情を表に出すことが苦手なタイプ

【赤木剛憲タイプ】
・人と衝突してしまいやすいタイプ
・ひとつの物事にこだわるタイプ
・完璧主義になってしまうタイプ
・理想が高すぎるタイプ

手本は安西先生の言葉や行動だけじゃない

 スラムダンクを題材に人材育成というと、よく名言集などで取り上げられる安西先生の言葉や行動から学ぶのだろうと思った人が多いかもしれない。しかし、この本で手本としているのは安西先生だけではない。

 もちろん、この本でも安西先生の言葉や行動は取り上げられているが、実はそうでない部分の方が多いのだ。チームのメンバー同士やライバルの言葉や行動に対してどう反応したかという点からも、力を引き出し方が紹介されている。

 部下にどのように接すればよいか、どのような声のかけ方をすれば効果的かなど、具体的なアプローチ方法がわかりやすく書かれているこの本。スラムダンク自体を読んだことがない人でも参考にできる内容だ。

文=大石みずき