宗教を知らずして世界の歴史と今はわからない! 学校では詳しく教えてくれない宗教について学ぼう

社会

公開日:2016/9/5

『図解世界5大宗教全史』(中村圭志/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「キリスト教」や「仏教」という言葉を知らない人はいないだろう。最近では「イスラム国」の影響もあり、「イスラム教」の知名度も格段に(しかも、悪い方向で)高まっている。

 けれど、「どこまで知っているか」と問われてしまうと、その三つの宗教の違いを的確に説明できる人もそれほど多くはないと思う。特に、キリスト教もイスラム教も、元は同じ「ユダヤ教」から派生したものだとさえ、知らない方もいるだろう。

 これはひとえに、学校で宗教について詳しく教えてくれないことに原因がある。日本人は「無宗教」で、オウム真理教やイスラム国のネガティブなイメージがあり、なんとなく「宗教に深入りするのはタブー」といったような風潮がある。だが、ワールドワイドな現代社会を正しく理解するために、宗教の知識は必須教養だ。

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図解世界5大宗教全史』(中村圭志/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、「宗教について知りたい」という多くの声に応えて、「世界の諸宗教の歴史、教え、教典の内容、習慣などを、マクロに、相互に比較しつつ、展望すること」かつ「細かなことは切り捨てるが、重要箇所についてはクローズアップしてディテールに踏み込むこと」そして「この二点をチャートやイラストのアナログ情報に生かすこと」に注意して書かれた「初心者からある程度知識を持つ人に向けて、詳細で分かりやすい宗教ガイドブック」だ。

 見開きの右半分は文章での説明。左半分はイラスト付きのフローチャートになっているため、文章の内容をしっかりと理解できる仕組みになっている。例えば、「仏教」「キリスト教」「イスラム教」の三つも、ポイントを比較した図解があるため、文章で読んでいた内容を頭の中ですっきりまとめることができる。

≪三大宗教のポイント≫
○開祖は?
仏教―釈迦(ブッダ)
キリスト教―イエス
イスラム教―ムハンマド

○めざすものは?
仏教―ブッダの道に従い、煩悩からの解脱をめざす。
キリスト教―キリストの信仰により、罪からの解放をめざす。
イスラム教―唯一神(アッラー)に従い、平等、平和に暮らす。

○教典は?
仏教―仏典
キリスト教―新約聖書
イスラム教―コーラン(聖書も尊重)

○修行や儀礼や生活規範は?
仏教―出家者は多くの戒に服し、瞑想行などに励む。在家者は五戒を守る。
キリスト教―聖餐式(ミサ)にあずかり、聖書と教会の教えに従って身を律する。
イスラム教―「六信」、「五行」、イスラム法に従う。

○施設は?
仏教―寺
キリスト教―教会
イスラム教―モスク

○専門家は?
仏教―僧侶(本来は修行者だが、人々の相談役でもある)
キリスト教―司祭(カトリックなど)、牧師(プロテスタント)
イスラム教―ウラマー(イスラム諸学の学者)

 上記は、本当に簡単にまとめたもので、その詳細は文章で堪能することができる。

 最後に、宗教において今最も注目されている「イスラム教」について少しだけ触れたい。「イスラム主義」というのは「イスラムの理念に基づく国家の創成を目指す思想・運動のこと」で、「イスラム主義」が必ずしも「悪い」集団を表すわけではない。このイスラム主義の中で、テロなどの過激な方法をとる一部の者たちが「イスラム過激派」となっている。

 日本では「政教分離」(政治と宗教は別)という立場をとっているが、イスラム教は「宗教は個人の内面だけの問題と考えていないので」、どうしても、政治と深く関わってきてしまうらしい。そこから宗教に関する紛争や暴動が起こってしまうのだ。

「宗教を知らずして世界の歴史と今はわからない」

 ビジネスマンはもちろんのこと、学生諸君は、この夏休みを利用して宗教を学んでみてはいかがだろうか?

文=雨野裾