『仮面病棟』を超える大ヒット間違いなし! 知念実希人最新作は、本格警察誘拐ミステリー
更新日:2017/11/13
知念実希人氏の最新作『あなたのための誘拐』(祥伝社)は、かつて誘拐被害者の少女を救えなかった捜査一課特殊班の元刑事を主人公に据えた本格警察小説。知念氏といえば、40万部のヒット作となった『仮面病棟』や「天久鷹央の推理カルテ」シリーズなど、医療ミステリー作家として名高いが、この作品は、彼の新境地と言っても過言ではない。誘拐犯との交渉や警察内部での争い、誘拐事件の被害者の親たちの様子など、事件の緊迫感があまりにも巧みに描かれている。
主人公は、警視庁捜査一課特殊班の元刑事・上原真悟。4年前、高輪台で起きた女子中学生誘拐事件での自らの身代金引き渡しの失敗によって被害者を死なせてしまった真悟は、事件以降、警察を辞め、家族とも別れ、抜け殻のような日々を送っていた。ところが、4年前の犯人と同じ「ゲームマスター」を名乗る人物が白金高輪在住の女子高生を誘拐。さらに犯人は、4年前と同じように、身代金引き渡しに、元警察官である真悟を指名した。以前と同様、真吾に誘拐された少女の命を賭けた「ゲーム」を行わせようとする誘拐犯。真悟は命をかけて、「ゲームマスター」と戦うことを決意する。4年前に失ったものを取り戻すために。
作品を読み進めていくうちに、リアルに進行していく誘拐事件に手に汗を握る。主人公である真悟、大捜査網を敷いて犯人の捕捉を試みる警視庁、そしてかつて真悟の同僚だった特殊班の刑事たち。彼らが正体不明の誘拐犯「ゲームマスター」に翻弄されていくさまが、息をつく間もなく繰り広げられ、いつの間にか物語に吸い込まれてしまっているのだ。
本当にこんな誘拐犯が現れたら、どうしたら良いのだろう。ページが進めば、進むほど、犯人の超人的な頭脳と、人を籠絡する類まれなる能力に寒気が走る。こんな卑劣なサイコパスを相手に、真悟は果たしてどう戦うというのか。
ページを捲る手を止める間もない展開、そして終盤十数ページで明かされる、衝撃的な真実。残酷な現実を目にした時、あなたは何を思うだろうか。この衝撃的な結末を、ぜひアナタも味わってほしい。
文=アサトーミナミ