「夜な夜なひとりでビール片手に多肉植物に話しかけてます」 お笑い芸人・ハザマ陽平×『タニクちゃん』よねまる【前編】
更新日:2016/9/21
ムチムチとした肉厚な葉っぱに、ぷっくりと丸みを帯びたかわいらしい形。このところ密かなブームが続いている多肉植物を描いた『GANMA!』連載中のマンガ『タニクちゃん』が、多肉植物好きの主婦やOLを中心に反響を呼んでいる。女心にも植物にも疎い34歳のダメ男と、人間の言葉を話すタニクちゃんたちが繰り広げるドタバタ劇に、植物大好き芸人・イシバシハザマのハザマ陽平さんも大ウケ!? そこで今回、作者のよねまるさんとハザマ陽平さんにそれぞれの“タニク愛”と、『タニクちゃん』の読みどころについて語ってもらった。
多肉植物の名前って力強く言うと「必殺技か?」みたいな
ハザマ陽平さん(以下、ハザマ) 僕が最初に植物に興味を持ったのは、食虫植物のハエ取り草を見たのがきっかけだったんです。ウツボみたいな形をしたネペンテスっていう植物で、「うわぁ、なんやコレ!」と思って。そこから植物にぐーっと入り込んでいって、最初はパキラとかモンステラとか育てやすいのを買いました。
そのあと何かの雑誌で「ユーリキニア・カスタネア・スピラリス」っていう、名前が長いわりにまったく想像がつかないってよく笑われる「柱サボテン」を見て衝撃を受けたんですよ。
よねまるさん(以下、よねまる) 多肉植物の名前って、ホントに長いですよね。
ハザマ 力強く言うと「それ、必殺技か?」みたいなね。でも植物好きになると、わりと早く噛まないで言えるようになりました。
よねまる 私はまだすぐにパッと思い出せないです(笑)。最初は、サボテンだったんですね。
ハザマ 「柱サボテン」って普通、真っ直ぐに育つんですけど、ウィルスとか環境の影響で、横に伸びたり広がったりまったく違う形に変化するでしょう。それで「なんや、この不思議なカタチは?」と興味がわいて、サボテンにのめり込んでいったわけです。
よねまる わかります、わかります。
全身が毛むくじゃらの猫みたいなものも。変わった形が面白い
ハザマ 僕は特に植物の葉っぱとか花の形に、ものすごくアート性を感じるんですよ。「これは人間がつくろうとしても無理やな、いろんな環境やその植物の性質でできた自然のアートやな」って。そこにすごく魅力を感じるんですね。最初は育てやすそうなエケベリア、ランポ―玉、マミラリアとかから買いはじめました。
よねまる 私、実は多肉植物を好きになったのは1年半前ぐらいで、それまで植物自体にあまり興味がなかったんですね。たまたま姉の誕生日に観葉植物をプレゼントしようと思いついて、ネットでいろいろ画像をみていたら「ゴールデンエッグ」に目がとまって。学名がカランコエ・オルギアリスっていう渋い名前で、「なんだこれは?」と。
それから多肉植物のことが気になって調べはじめたら、葉っぱから根が生える「葉差し」という育て方があると知って「な、なんでそうなるの?」って。で、すぐに『多肉植物図鑑』(日東書院本社)を買って、「え? なんでこんな形になった?」と思いながら見てたらすごく楽しくなっちゃって。それで自分でも買いはじめたんですね。
ハザマ 「なんじゃこりゃ?」っていう衝撃、めちゃくちゃ大きいですよね。
よねまる 全身が毛むくじゃらのものとかもあって。自分の体に日陰をつくるために周りを毛でおおってるなんて、猫みたいと思ったり。暑い季節にも対応できるようにとか、ちゃんとそれぞれ理由があるんだけど、とにかく変わった形で面白いんです。
ハザマ サボテンのトゲも、水分がある葉っぱを食べようとする動物から身を守るために生えてるんですけど、生え方が同じものはひとつもないですからね。ところで多肉植物好きって女性のほうが多いですけど、なんでなんでしょうか?
よねまる うーん、やっぱり見た目かな。
ハザマ 見た目も可愛いし、世話も楽ですもんね。普通の植物と比べると水やりの回数も全然少なくてすみますし。
よねまる それでも結構、育てるのは難しいんですよね。
「植物もやっぱり寂しいんやな」って
ハザマ 『タニクちゃん』でも、多肉植物のことをなんにも知らない主人公の花田くんが、エケベリアちゃんにビチャビチャ水をあげて怒りを買ってるでしょう。初心者の場合、そこは外せないポイントですよね。
よねまる そうなんです。
ハザマ 植物のことをマンガで読んだのって、今回はじめてだったんですよ。多肉植物のストーリーってどんな展開なんやろう?って読みはじめたら、主人公の花田くんが僕と同じ34歳なんですよね。それで植物のこと何にも知らないくせに、「PAPAS」っていう多肉植物専門のすっごくいい環境のお店を母親不在の間に任されるなんて、めちゃくちゃ贅沢な話じゃないですか。「うわー、これ俺やったら、めっちゃテンションあがるんやけどな」と思って。
それでいきなり花田くんが、植物には水をあげときゃいいんだろうってなったとき、「他の植物と同じと思うなよ!」って反撃したエケベリアちゃんと同じ反応しましたよ。いやむしろ僕がエケベリアちゃんやったらもっと怒ってるわ~と。そんな風にタニクちゃんたちが人間の言葉でしゃべりかけてくるのも、これもまためちゃくちゃ贅沢な話で。これが現実の世界だったら絶対に枯らすことないのになぁって思いましたね。
よねまる 水やりのタイミングって本当に難しいですよね。このマンガに出てくるタニクちゃんたちはだいたい2、3週間に一回ぐらいですけど。
ハザマ 僕の家にあるエケベリアは、2、3週間に一回お水をたっぷりあげて後はほったらかしなんですけど、不思議なことに地方の仕事で2泊3日とか家を空けると、なぜか枯れてるんですよ。
よねまる ええー、寂しいのかな?
ハザマ それってきっとありますよ。いつもと同じ環境なのに、「なんでこんなに萎れるんや? やっぱり植物も寂しいんやな」って思いますもん。そういうときに「お前たちも生きてるんやなぁ!」って愛おしく感じますね。よねまるさんもそう思って、タニクちゃんたちにしゃべらせたんでしょう?
よねまる うんうん。絶対、しゃべってそうだなと思ったので。
ひとり夜な夜なビールを飲みながら多肉植物に話しかけてます
ハザマ 危機を感じると訴えかけてきますよね。それはすっごい感じます。すっごい気持ち悪い話ですけど(笑)。
よねまる 私もついつい話しかけちゃいますもん。
ハザマ 僕、めちゃめちゃ話しかけますよ! 一日の終わりの楽しみが、新芽が生えてきたような植物を机の上に並べて照明をあてて、それを眺めながらひとりでビールを飲むことなんです。どれから生えてくるんやろうなぁと観察しながら新芽を見つけたりすると、「おおー! ようやったなぁ、頑張ったな!」とか、「お前が最初なんやな、よしよし、その調子やからな」とか話しかけてます。そういう時間が一番好きな瞬間なんですね。
よねまる 私も仕事から帰ってくると、多肉植物の分厚いぷにぷにの葉っぱを触りながら、「元気? 大丈夫だった?」ってしゃべってます。
ハザマ やっぱり話しかけてるんですねぇ。自分が話しかけるのは何とも思わないですけど、人が植物に話しかけてる話を聞くと、「ええ?」ってなっちゃいますね(笑)。勝手な話ですけど。
よねまる ハザマさんは、植木鉢まで自分で作ってるんですよね。
ハザマ 今日も持ってきましたよ。『HAZAPOT』っていうんです。
よねまる かわいいですね!
取材・文=樺山美夏 写真=山本哲也
【後半はこちら】植物好きの人に悪い人はいない!? お笑い芸人・ハザマ陽平×『タニクちゃん』よねまる
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