ワタミはなぜ「ブラック企業化」してしまったのか?

ビジネス

更新日:2016/10/17

 「部下のことが大好きで、社員としての成長を願い、その部下の幸せを祈る」――ワタミグループ創業者・渡邉美樹のこの言葉のどこが間違いだったのだろう。真面目で一生懸命な経営者とその部下たちが、それゆえにこそ落ち込んでしまう陥穽と危機。その原因と過程を厳しく追及した『ワタミの失敗「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』が、2016年9月8日(木)に発売された。

 近年「ブラック企業」という言葉が、広く使われるようになった。その代表格としてあげられるのが“ワタミグループ”。ブラック企業問題の筆頭に挙げられ、世間にネガティブイメージを持たれた結果、ワタミグループの店舗からは客が離れ、求人募集では定員割れを起こす事態に。こうした影響から2014年3月期には、上場後初の赤字に転落し、現在も厳しい経営状況が続いている。

 同書の著者・新田龍は、日本でも珍しい「ブラック企業アナリスト」。現在はワタミグループからの要請を受けて、グループの「新卒採用プロジェクトアドバイザー」を努めている。著者が実際にワタミのブラック企業への転落の内幕、経営者、幹部をはじめとする会社の対応、社員への直接インタビューなど詳細を調査してわかったのは、ワタミが決して経営陣、会社の違法な「ブラックな」姿勢、経営によりブラック企業化したわけではない、ということだ。

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 むしろ、社会への貢献、顧客満足、あくなき企業努力、社員の成長を求めるという、いわば「善意の会社」だった。カリスマ経営者・渡邉のもと、やる気に満ちた幹部や社員たち。一見何も問題がないようにみえるが、現実としてワタミはブラック企業になってしまった。それはいったいなぜなのか? そこには、成長企業だからこそ起き得る「落とし穴」の存在があった。

 同書では、著者がワタミグループに起きた事実を調査・分析してきた結果をもとに、ワタミがブラック企業に至ったプロセスや脱却方法を解説。ワタミグループ以外の事例も多数紹介し、ブラック企業の落とし穴に迫る。

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