料理家なかしましほさんに「栗のスコーン」特別レシピを教えてもらった!『まいにちおやつ』が「料理レシピ本大賞」お菓子部門大賞を受賞!
公開日:2016/9/22
2016年9月15日に発表された「第3回 料理レシピ本大賞」のお菓子部門で、料理家・なかしましほさんの『まいにちおやつ 初めてでも失敗しない51のレシピ』(KADOKAWA)が見事大賞を受賞した。
「お腹もこころも満たすおやつ」を作り続けるなかしまさんにとって、第1回についで2度目の大賞受賞となる。
なかしまさんのおやつ人気は高まる一方で、雑誌やイベントにもひっぱりだこ。取材に同行したダ・ヴィンチニュース担当者も、何度もなかしまさんの本のレシピでお菓子を作っている大ファンだという。なかしまさんが東京都国立市で開くお店「foodmood(フードムード)」は、本のイメージそのままの、グリーンがセンスよく配された、おしゃれで居心地の良い空間。開店前のおいしい香りがただよう店内で、受賞について、本について、おやつ作りについてお話をうかがった。
――『まいにちおやつ 初めてでも失敗しない51のレシピ』(以下『まいにちおやつ』)料理レシピ本大賞お菓子部門大賞受賞、おめでとうございます。
なかしましほさん(以下、なかしま) ありがとうございます。ほんとうに毎回、自分の本でいいのかなあという感じなんですけれど、一緒に作ってくださったスタッフの皆さん、読んでくださった読者の皆さん、おすすめしてくださった書店の皆さんのおかげです。その方たちのおかげでいただいた賞だと思っています。
――『まいにちおやつ』を作るにあたって、意識していた読者層などはあったのでしょうか。
なかしま 『レタスクラブ』で連載していたものを中心にまとめたので、『レタスクラブ』読者の30代くらいの方でしょうか。あとは小さいお子さんがいるお母さんに向けてですかね。ずっとそこは一緒ですね。そこは変わらず……。私のお菓子本は、バターや乳製品を使わないものが多いのですが、授乳されているお母さんって、乳製品を控えていらっしゃる方がわりといるんです。あと、子供に食べさせたいおやつは、できるだけ簡単に作れて、安心なものをということで、私が考えるレシピを気に入ってくださるみたいで。
――『まいにちおやつ』も、とてもナチュラルで作りやすそうなレシピばかりですね。今までの本との違いはなにかありますか?
なかしま 今までの本のレシピや、お店で出しているお菓子はバターなどを使っていないのですが、この『まいにちおやつ』に関しては、それよりも、気軽に作れて失敗がない、初めてでも作れる、というのをいちばん大事に考えたので、バターも乳製品も使っています。乳製品を使っていないレシピもありますが、そこは今までの本とはちょっと違うかもしれません。
――『まいにちおやつ』ならでは特徴としては、サブタイトルにもなっている「初めてでも失敗しない」というのが大きいのですね。
なかしま どの本でもそれは思っているのですが、材料のことだけでなく、特にこの本は「失敗させない」ことを意識した作りになっています。読者の方が失敗しやすいポイントって、作る側からも想像できるんですね。そこを、工程をていねいに見せたり、ここは気をつけてね、というところは説明文に色付きの線を引いてわかりやすくしたり、さらに気をつけるポイントを吹き出し付きのイラストで入れたりして、なるべく詳しく説明しています。なので、今までの本にくらべて、より失敗しにくい本になっていると思います。実は、30代の方へと言いつつ、うちの母がすごく気に入って、この本からいっぱいおやつを作っているんです(笑)。ふだんお菓子作りをほとんどしない母が、これだと作りやすい、と言っているので、それは良かったなあ、成功したな、と思っています。
近所のスーパーで買える、シンプルな材料を選ぶ楽しみ
――冒頭の材料を紹介したページを拝見して、見覚えのあるものばかりで驚きました。この材料で作れるんだ、という安心感もありました。
なかしま あまりめずらしい材料は使わない、というのも自分のレシピのテーマのひとつで、近所のスーパーで買える材料で作ってほしいと思っているんです。近所で気軽に買える材料だからこそ、ひとつひとつを選ぶ楽しみもあると思うんですね。バターだったら、何種類かあるけれ、これがおいしそうだなあとか。お砂糖もいろいろ種類があるけれど、これはどうかなあとか。その選ぶものによって味も変わるよ、というのも伝えたいことなんです。いつものバターがなかったから、ちょっと高いバターを買ってみたら、同じ分量でも風味があっておいしいと気付けたりする、そういう楽しさもあるんです。複雑な材料を揃えるのではなくて、シンプルな材料の中で、いろいろなものを試してほしいと思います。
――お菓子作りのインスピレーションはどこから来るのですか? たくさんのレシピを生む苦しみのようなものはあるのでしょうか。
なかしま 街で見かけたなにかがおいしそうだったとか、旅先で食べたこれがおいしかったからとか、そういうきっかけで作ってみることはよくありますね。苦しみは……うーん、そうですね、どの素材を組み合わせようかな、とかけっこう楽しく考えていますね。いろいろ他のことをしながら考えているうちに、ぴたーっと「あ、これがいいかもな」っていうのを思いつくときがあって、それで試作を始めるという感じです。お菓子を作るのに、苦しいというのはないですね。あ、でも、試作がいっぱいできてしまうので、それをどう消費しようかというのがとても苦しいです(笑)
――試作はひとつのレシピを完成されるまでに、どれくらいなさるんですか?
なかしま 1回で決まることもあれば、5回、10回と繰り返すこともありますね。レシピは、完成してからもずっと調整が続いていくものだと思っているんです。自分が歳とともに変わっていくように、食べたい味とか、もっとこうだったら、というのも変化していって、ずっと同じではないんです。最初からアレンジすると、どれが完成なのかわからなくなるので、皆さんにも、まずは本のレシピ通りに作っていただいて、うまくできたら、それから先は自分が好きな味になるように、どんどんアレンジして楽しんでほしいなと思っています。
おやつ作りには、うれしいおまけもいろいろ
――この本で、読者に伝えたかったことはなんでしょうか。
なかしま タイトル通り、まいにちでもおやつを作ってほしいっていうことを、いちばん伝えたいです。気軽に作ってくださいね~って。どれも、食べごたえがあって、小腹がすいたときにつまめるようなおやつです。私がそういうのが好きなので(笑)。今回のオリジナルレシピ「栗のスコーン」もそうです。ちょっと作り置きしておいて朝ごはんとか、出かけるときのおやつとか、そんなふうにも使ってもらえたらいいなと。
――なかしまさんにとって、お菓子作りの魅力はなんでしょうか。
なかしま 料理って、どこか「しなくてはいけない」ところがあるんですけれど、お菓子作りって、強制されるものではないじゃないですか。ただただ、楽しくて作る。私の友だちで、仕事がいそがしくても家に帰ってお菓子を作るのが楽しいっていう人がいて。人それぞれ、たくさんのリラックス方法があると思うんですけれど、お菓子作りが、日々をちょっと楽しく、リラックスするための方法のひとつになるといいなあと思います。作って、食べて、おいしくて、人にもあげられて。そういううれしいおまけもいろいろあるので。
――二度目の大賞を受賞されて、ますます、なかしまさんのお菓子に注目が集まると思います。最後に、これからのことをお伺いできますか?
なかしま 私はいっぱいレシピを考えて、ポンポン本を出していけるようなタイプではないと思っているので、これからも、こうやってお店をしながら、良いレシピがあったらそれを作りためていって、皆さんにお伝えできたらなと思います。たぶん、お伝えしたいことは大きく変わったりはしないと思うんです。なので、新しいものがたまったら、またいつかご紹介したいなあと思います。
ダ・ヴィンチニュース特別レシピ「栗のスコーン」
栗のスコーン
材料(6個分)
A
薄力粉 100g
強力粉 40g
きび砂糖 30g
ベーキングパウダー 小さじ山盛り1
塩 ひとつまみ
無塩バター 40g
牛乳 60ml
栗の甘煮 6個
準備
・栗の甘煮は水気をふき、1個を6~8等分に切る。
・バターは1cm角に切って冷蔵庫で冷やしておく。
作り方
1.ボウルにAを入れ、手でぐるぐるとよく混ぜる。
バターを入れ、手早くフォークでバターを細かくつぶして粉となじませる。バターの大きなかたまりがなくなればOK。
2.牛乳を全体に加えて手でぐるぐると混ぜ、粉気が少なくなったら栗を加え、粉気がなくなるまでさっと混ぜてひとつにまとめる。
ラップをして冷蔵庫で1時間冷やす。
3.生地を6等分してオーブンシートをしいた天板の上に間隔を置いて並べる。
180度に予熱したオーブンで20分焼く。
好みでお砂糖を少し入れて泡立てた生クリームを添える。
*栗の甘煮を手作りする場合
栗は熱湯をたっぷり注いで冷めるまでおき、鬼皮、渋皮を包丁でむいて水にさらす。
鍋に栗とかぶるくらいの水を入れて中火にかけ、沸騰したら弱火にして20分茹で、冷ます。
栗の重さの半量のきび砂糖と、半量強の水を入れて中火にかけ、砂糖が溶け沸騰したら火を弱め、くりを入れる。
弱火で15分ほど煮て、冷ます。冷蔵庫で4~5日保存可。
なかしまさんからのコメント
「今が旬の栗をたっぷり使っていて、栗のほくほく感がポイントです。生地は、外側はカリッと、中はふんわりするように作っているので、栗の食感とのバランスが楽しい、ちょっと豪華なスコーンです。なにもつけなくてもおいしいですが、お好みで生クリームを添えて召し上がってみてください」
取材・文=波多野公美 撮影=山本哲也
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