「これはさぼりじゃなくて充電タイムだよ」―明光義塾のCMから生まれた「サボロー」の魅力に迫る!
公開日:2016/9/29
明光義塾のCMが面白い。明光義塾というのは、個別指導による自立学習を謳った学習塾である。「YDK(やれば・できる・子)」というキャッチーなフレーズを生み出し、テレビCMが大反響。実写バージョンだけでなくユニークなアニメのバージョンも作られ、さらに『週刊少年サンデー』で連載中の漫画『電波教師』から「YD(やりたいことしかできない)」教師・鑑純一郎たちによるコラボCMまで登場して話題を呼んだ。
そんな人気CMシリーズの中から特異なキャラクターが生まれた。それが「サボロー」である。「テストの前になると、やたらと遊びたくなる」「今すぐやらないとダメなのに、後回しにしてしまう」などという経験は、誰にでもあるもの。実はその原因こそ「サボロー」にあったのだ! CMに登場するサボローは、全身が真っ黒で中心に「サボロー」の文字。このシンプルなキャラクターが、対象者にお菓子を差し出したり甘い誘惑を囁いたりするなど、あらゆる手段を使ってサボらせようとするのだ。そんなサボローの生態、というか魅力に迫った著作が『YO!サボロー』(サボロー会議/文藝春秋)である。
さて本書にはサボローの名言が収められているのだが、いくつか紹介しながら彼の「働きぶり」を確認してみよう。
名言1:これはさぼりじゃなくて充電タイムだよ
サボるときというのは、なにかと後ろめたいもの。それを正当化してくれることを、きっと誰もが望んでいるはずだ。その願いを具現化したのがこの4コマ。サボローにこういわれてしまっては、もうサボるしかないじゃないか! ターゲットの心理を巧みに読み取ったサボローの手腕には脱帽するしかない。
名言2:どうせテストが終わったら忘れるんだろ?
試験前にこんなことを直球でいわれると、どんな「YDK」でも心が折れるはず。まさにミもフタもない言葉である。こうやって子供たちのやる気を削ぎにくるサボローの舌鋒、恐るべし! しかし覚えようとしている「いちごパンツで……」って何? 気になって調べたら「いちごパンツで本能寺」だと!? まさかこんな語呂あわせが存在していようとは、サボローよりこっちのほうが個人的に破壊力があった。
本書では名言のほかに「サボロー診断」なるものも掲載されている。日頃の「サボロー度」がチェックできるというスグレモノだ。早速、試してみたら……全部「はい」だったぜ! 当然ながら「サボロー度」は100%。さぞ褒められるかと思いきや、コメントで諌められた。どうやら診断者は「YDK」側の人間だったようだ。
この他にも本書ではサボローの特徴やアプリの紹介など、その魅力を余すところなく解説している。彼を知り、その上で思うのは「サボローは敵ではない」ということだ。確かにこちらのやる気を挫きにくる、やっかいな相手に見える。しかしそれは、我々が頑張りすぎだからかもしれないのだ。もしも体を壊しそうなほど弱っていたなら、ぜひサボローの誘いに乗ってみてほしい。適度なサボりは必ず皆の健康を助け、明日の活力に繋がるだろう。もちろん、これは頑張っている人の話。普段、人より遥かに怠けている人は、あまりサボローと付き合っているとダメ人間一直線なので注意されたし。
文=木谷誠