収入103万円内でも扶養控除にならない!? 知らないと大変! 税金の落とし穴!! 『税務署は3年泳がせる。』

マネー

公開日:2016/9/30

『税務署は3年泳がせる。(日経プレミアシリーズ)』(飯田真弓/日本経済新聞出版社)

 よく分からないけれど、私たちの生活に密接なもの。それが「税金」。日本で暮らしている以上、私たちは税金と無縁では生活ができない。けれど税金はとにかく複雑で分からないことだらけだし、消費税しかり、所得税しかり、なぜか「不当に搾取されているのでは?」と疑ってしまったり、「できれば納めたくない」と「税金」にはマイナスのイメージばかりつきまとっている。

 しかし、税金がなければ、私たちは安心して暮らすことができないと言っても過言ではないのだ。

税務署は3年泳がせる。(日経プレミアシリーズ)』(飯田真弓/日本経済新聞出版社)は、身近なテーマやエピソードを例に挙げ、税務署の仕事、税務調査のこと、また税金に関する意外な落とし穴などを親しみやすく、分かりやすく教えている一冊である。

advertisement

 著者は26年間国税調査官として税務調査の仕事に携わる中、結婚、出産、子育てを経験。現在は税理士であり、メンタルヘルスケアや人材育成研修などの仕事にも関わっている。

 ところで、税務署の事業年度は7月から始まり、6月に終わるそうだ。(一般企業は4月から3月末日までがほとんどだろう)。そして、税務署の一年は大きく3つのシーズンに分けられる。「ナナジュウニ(7月~12月)」「カクシンキ(1月~3月)」「ヨンロク(4月~6月)」のそれぞれの期間で、税務署ではどんなことが行われ、そして調査官はどんな気持ちでいるのか。税務署の「シーズン」を知ることで、私たちの生活にどんな影響があるのか、分かりやすく理解できるよう本書はまとまっている。

 一番驚いた「税金の落とし穴」は、「収入103万円内でも扶養控除にならない可能性がある」ということ。

 働いている女性(男性)にとって、両親、夫(妻)の「扶養」に入るか否かは、大きな問題だ。「扶養控除」があれば、一定の所得控除が受けられ、これは家庭経済の大きなメリットになるからだ。

 なので、パートやアルバイトで働く場合、「収入103万円内だったら扶養控除に入れる」という知識をお持ちの方は多いと思う。だがそれも「雇用形態」によって異なるらしい。同じ業務内容、同じ仕事でも労働形態が「業務委託」か「労働契約(雇用契約)」かによって、所得の種類が異なってくるのだ。

「業務委託」だった場合、「事業所得」となる。よって所得金額が38万円を超えた場合、配偶者の扶養対象外となる。103万円内で扶養に入れるのは、「労働契約」の場合、つまり「給与所得」の際に限られるのだ。

「え?」と焦った方、昨年1年間の収入が事業所得だった場合、会社から届いた書類には「平成○○年分 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」となっており、給与所得だった場合は「平成○○年分 給与所得源泉徴収票」となっているそうなので、すぐにチェックしてみよう。

 また、最近耳にするようになったFX(外国為替証拠金取引)においても、所得が得られた際は税務署に確定申告をしなければならない。さらに、配偶者(親族)の扶養に入っていた場合、FXでの儲けが38万円を超えてしまうと扶養家族に入れないので注意が必要だ。

 その他、国税調査官は様々な視点から「税金が正しく納められているか」をチェックしている。税務調査の実調率(国税当局が1年間に実際に税務調査を行った割合)は、法人で4%台、個人事業主だと1%台だという。つまり、ほとんどの企業(経営者)は税務調査とは無縁でいられるのだが、だからといって、納税をおろそかにしてはいけない。国税調査官は企業主の「同窓会に参加!」のブログもチェックして情報を集積しているし、サラリーマンが趣味で始めたブログのアフィリエイト収入もしっかり把握している(もちろん、申告すれば何の問題もない)。

 その詳細は本書を手に取り、いかに国税調査官が些細な情報を蓄積し、たゆまぬ努力をし、時間をかけて「不正」を暴いているかを実感してほしいと思う。

文=雨野裾