パフォーマンスを上げるために「やる気」は必要ない?! 「なりたい自分」になるための脳の使い方
公開日:2016/10/4
パフォーマンスを最大限発揮すること。仕事をするうえでの大きな課題であり、誰もが望んでいることだと思う。しかし、なんだかやる気が起こらず、パフォーマンスが上がらない…と悩んでいる方は多いのではないだろうか。
そんな方にオススメしたいのが『いつもパフォーマンスが高い人の脳を自在に操る習慣』(茂木健一郎/日本実業出版社)だ。
「パフォーマンスを上げるために“やる気”はいっさい必要ない」
著者であり脳科学者でもある茂木健一郎氏は、冒頭でこう語る。「やる気が起こらないからパフォーマンスが上がらない」と思っていた筆者にとっては衝撃的で、にわかには信じ難い一言であった。茂木氏によると、パフォーマンスは日々の習慣によって成り立つものであり、必要なのはやる気ではなく、いつものことを淡々とこなす「平常心」とのこと。そのために、脳を自分で操り、様々な習慣を作ることが大切なのだ。
本書では、「パフォーマンスに「やる気」は必要ない!」をはじめとして、脳を操るための45の方法が紹介されている。その中で、筆者が実際に試したものをご紹介しよう。
自分のなかにもうひとりの「決める係」をつくる
パフォーマンスをアップする際に「決断力」も必要なスキルであると指摘する茂木氏。異論はないが、重要な事柄であるほど決断は難しいものだ。そこで本書では、「自分の中に決断を担当するもう一人の自分」を作り、決断してもらう自分と、それに従う自分を別人である、と考えることをオススメしている。もう一人の自分と対話するようなイメージを持ち、決める理由や根拠は考えないことが大切だ。
仕事に関わることではなくてもいいそうなので、まずは日常生活で迷った時に、もう一人の自分に決めてもらうようにした。例えば、コンビニでアイスを買うかプリンを買うか迷った時(本当に些細なことだけれど、よくあるので…)。普段なら、それぞれの商品の棚を行き来して、しばらく悩んでしまうところだ。しかし、もう一人の自分が即座に決断し、「アイス」という答えをくれた。理由や根拠は聞かず従ったので、数秒で決断ができた。
このような些細なことから始めてみると、1日の仕事の予定を立てるのもラクになったことに気付く。もう一人の自分が決めてくれるからだ。茂木氏も強調しているが「もう一人の自分」を尊重することがポイント。その都度「決断」が行われるので、迷いがなく、作業にも集中して取り組めた。もう一人の自分を作る前は、一旦決めて作業を始めても、「やっぱり別の作業をしようか…」なんて考えてしまい、結局どの作業もはかどらない、ということがよくあったので、この方法は間違いなくパフォーマンス向上につながると感じた。
「無茶ぶり」する上司脳とやらされる部下脳
著者によると、脳の前頭葉には、無茶ぶりをする、キューを出すような回路と、「いまどのくらい大変なのか」という負荷をモニタリングする回路の両方が存在するそう。つまり、ある意味で、「二人の自分」が脳には存在するのだ。本書では、パフォーマンスを向上させるために、無茶ぶりを担当する「上司脳」を作ることが推奨されている。
例えば、受けた仕事の締め切りが一週間後なら、「上司脳」でそれを5日後にしてしまう。さらに「部下脳」では、それを自分自身が発した命令に置き換える。つまり、外部からの命令を、無茶なものに変換し、自分の目標にしてしまうのだ。そうすることで、「やらされている」のではなく「やっている」と脳が変化し、高いパフォーマンスが発揮できるようになる。
この「上司脳」と「部下脳」も試してみた。本書では、「締め切りのある原稿」の例が挙げられているが、まさにそのケース。原稿に限らず、仕事には常に締め切りが存在するわけで、今までは締め切りのことを考えると憂鬱になっていた。しかし、この方法を試してみると、「締め切り」ではなく「目標」となり、以前と比較すると明らかに意欲的に作業に取り組めるようになった。すぐにすべての締め切りが完璧に守れるようにならないとしても、地道に続けていけば習慣にできそうだ。
本書では他にも、脳のストレッチ方法や、「なりたい自分」になるための脳強化トレーニングなど、脳を操る習慣を身につけるための方法が多数紹介されている。「脳」と聞くと難しそうなイメージを抱いてしまうが、説明も例も非常に分かりやすく、楽しみながら読み進めることができる。幅広い方に読んでいただきたい一冊だ。
文=松澤友子