【ダ・ヴィンチ2016年11月号】「男と、本。声優編」特集番外編
更新日:2016/10/6
特集「男と、本。」第2弾は、「声優編」です
編集M井
『ダ・ヴィンチ』11月号第2特集は、「男と、本。~声優編」です。今、大人気の豪華男性声優の方々に、ご登場いただいております!
ライターさんが、こぞって「“テープおこし”の際、声の良さに聴き惚れてしまいます~」とご報告くださった今企画。
振り返れば、本誌、初めての声優特集でございます。
「初めて」に至るきっかけはいろいろあるのですが、(私的な思いになりつつ)その経緯を、番外編的な感じでちょっとだけ、書かせてください。
初めて私が「声優」にインタビューをさせていただいたのは、今年『おそ松さん』特集内での小野大輔さんの取材でした。
その時の「特集番外編」にも書かせていただいたのですが、大変恐縮ながら、これまで私はアニメ作品を観る機会があまりなく、声優さんたちの「声」を意識することもないまま、編集者人生を過ごしてきました。
ですので、今まで取材経験のない業界の方へのインタビューに対し、ど緊張感してたのです。(初めてはいつもそうなる)
結果、小野さんの取材前、限られた時間のなかで、事前に資料を頭に叩き込もうと、必死。
そこで、小野さんの著書『もす。』を拝読。
!?
え、声優さんって執筆活動もされてるの!?
『もす。』は、小野さんの日常や仕事の機微を、丁寧に、そして敬意の目線で綴られている、素敵なエッセイで(時に、締切に追われている回もあって面白かったり……)、その柔らかで謙虚な文面には、お人柄がにじみ出ているかのようにも思いました。
また「声優」という職業の方々が、普段から「言葉」を、至極大切にされていることが分かる本でした。
そして、取材当日も、私の緊張など一気に解してくれるかのように、小野さんは、こちらの質問の意図を的確につかんでくださり、言葉をひとつひとつ選びながら、お話くださっていました。
「ああ、声優さんのインタビューというものは、これほどロジカルでわかりやすいものなのか」と感嘆。
※ちなみに、小野さんは今号でも取材させていただき、本を3冊選んでいただきましたが、なるほどなあ、というセレクトで(他人を思い、考えることのできる、優しい本だと思いました)。取材中も本のページを繰りながら、時に何かを思い出すように留まったり、言葉を選びながら、丁寧に「本と自分」を伝えてくださいました。
思い返せばこの取材、そして小野さんの著書から、私は「声優」の方々がどれだけ「言葉を紡ぐことにどれだけ留意しているか」を初めて知ったように思います。
また、その後、鈴村健一さんが総合プロデューサーをつとめられている『AD―LIVE』という舞台を(DVDで)見たことも今企画を組む大きなきっかけでした。
『おそ松さん』特集後。以来、それがきっかけとなり、さまざまな媒体から聴こえてくる「声優の声」は意識し始めてはいたものの、忙しくなるうち通常営業な毎日を送るなか、ふいに演劇ライターさんに「何か新しくて面白い舞台あったら教えて」と教えを請い、教示いただいたのが『AD―LIVE』だったのです。
ネットからポチっとして、届いたDVDをいそいそと再生。
!?
え、声優さんって舞台役者もされるの!?(声優さんばっかりで!?)
この舞台、 板の上に立つのは、誰もが声優という肩書きをも持つ、役者たち。
おおまかな設定とプロットはあれど、90分ノンストップで役者たちの「アドリブ」で物語が展開していくという……しかも、連日キャストが変わるので、他のキャストの回も観たくなるし、キャストが変われば、オチも展開も変わるし、何やら技量も運も性格みたいなのも見えてくるし……観れば見るほど面白くなってハマっていくという……大変中毒性のある舞台だったのです(私見)。
そんなわけで、すっかりこの舞台の虜になった私は、あらかたDVDをそろえ、副音声まで観尽くした上で、これは「声優」だからこその舞台であるのだろうなー……などと感じ、また「アドリブ」を最大限に活かすこのギリギリラインの見極めが難しい(であろう)プロットを書いた、そしてこの企画を成功させている鈴村健一さんの「クリエイティブ感」にすっかり、魅入ってしまったのです。
(今更ながら) 声優さんってなんて多才なんだろう。
ど、どんな本を読んでいるのかお聴きしてみたい……!
実は、今回タイトルを打った、「男と、本。」という特集ですが、2012年に大好評をいただいた企画で、(当時は)俳優やお笑い芸人さん、ミュージシャンの方々などにご登場いただき、「オールタイムベスト」の本を数冊選んでいただき、その「本」を紹介していただくという紙面でございました。
「なぜその本が好き(大切)なのか?」という問いに対し、本、およびインタビューの回答から感じたことは、「セレクトいただいた“本”から、その人自身の姿が浮き彫りになってくる」ということで、
読者の皆様はもちろんファンの皆様にも、本を通して別アプローチから、その人自身の「魅力」を伝えられるという楽しさがあり、また撮影もインタビュー文面にもこだわりまくり……な、個人的にも大変気合の入れた企画でございました。
先にも述べましたが、本当にありがたいことに、大反響をいただいた特集となりまして、ですので、これまで何度も特集会議の度に、結構な頻度で「第2弾を」という声が挙がってきた企画でした。
……なのですが、当時メインでこの特集を担当していた私には、「特集作業中に、なぜか“歌舞伎揚げ”ばかりを食べていた」という謎の記憶が蘇えり(おそらく忙しくて食事をとれなかったらしく)、「……ま、またの機会に……」などと言い続け、あっという間に早4年の日々が経っていたのでした。
そんな重すぎる腰を(すっかり忘れて)嬉々としてあげることになったのが、「声優」という方々にスポットを当てた、今回の企画でございます。
今回特集全体を通して、私自身、声優さんが活躍される業界のことに関しては、本当にまだまだ知らないことばかりで、大変に恐縮なのです……。なのですが、ひとつ、気づいたことがあって、
それは、意識してみれば、分かりますが、世の中に彼らの「声」はありふれていて、そして、どれだけ世界は、彼らの「声」で鮮やかに彩られているんだろう、ということでした。
後に鈴村健一さんのインタビューで「『AD―LIVE』などをきっかけに、声優さんってすごいってことを多くの方に知ってもらいたい」と、仰られていましたが、まさに、いま私自身が、その通りになっている次第です(笑)。
今回、おおよそ<秋放送のアニメ・映画、または新作OVAが出る><さらにその上で原作作品があること>に縛り、取材をさせていただきましたが、この特集を機に、彼らの声を聴き、また原作を読んでいただき、ぜひたくさんの方に「声優」という職人たちの“凄み”を知ってもらいたいと願います。
また、終盤に行わせて頂いた、櫻井孝宏さんの取材時、少し雑談する時間がありまして、その時に伺った「伝えることを意識し、大切にしている」とのお話が胸に、残っています。
「自分が放った言葉次第で、自分が演じているキャラクターも曲げてしまう可能性もある」という……プロフェッショナルだなあ、と。その取材を経て扉のリードを書いた次第です。
(櫻井さんは本当にまとう空気が柔らかくて、でもお兄さん感みたいな雰囲気もあって、なんとも素敵でございました!)
そんな“言葉に浸った男たち”の「読書」にもぜひご注目くだされば嬉しいです。またファンの皆様には、彼らの新たな魅力が伝われば幸いです。
最後になりましたが、今企画にご協力いただきました、皆々様に感謝いたします。 ありがとうございました。
そしてそして! 特集とは関係なくて申し訳ないのですが……!
連載小説『騙し絵の牙』が今号で、最終話になります。どんでん返しのラスト、そして主人公・速水の「過去」が明らかになります。(エピローグがかっこよすぎてもう、速水と小山内の会話には痺れまくり)
3年前にいきなり押しかけ、小説執筆を依頼し、取材を重ねながら壁を乗り越えつつ、長編連載を執筆くださった、作家の塩田武士さんには感謝しかありません。
この場を借りて、御礼を言わせてください。本当にありがとうございました。(&『罪の声』山田風太郎賞ノミネート、おめでとうございます)
また、表紙を毎号飾ってくださった大泉洋さんにも、大感謝でございます。(毎回熱演しながら撮影くださりました……涙)
ちなみに、次号のTEAM NACS 20周年記念特集では、『騙し絵の牙』のスピンオフを、ちゃっかり依頼しておりますので、ぜひ楽しみにしていてください。(表紙もNACSです~!)。あとNACSと言えば、今号で松田龍平さんと戸次重幸さんの対談も紙面ございますので、ファンの皆様、チェックしてみてください。
【お知らせ】
来月11月5日にノイタミナアニメ『バッテリー』の公式ガイドブックが発売されます! 本特集にもご登場いただいている梅原裕一郎さんなど、キャストスタッフ合わせて15名にインタビュー。こちらもよろしくお願いします。