偽装サークルにネットのトラブル…キャンパスライフに潜む危険
公開日:2016/10/9
大学生の皆さん、後期の履修は順調でしょうか。前期に落とした分はカバーできそうですか。え、厳しそうです? うーん…穏やかな年末年始が迎えられるといいんですけれど。
単位や履修に関するアレコレは大学生にとって大きな問題ではありますが、それ以外にも悩みが重なるのが、学生生活というもの。例えば、大学生協のアンケート調査『CAMPUS LIFE DATA 2013』によると、大学生が入学後に遭遇したトラブルの1位は、実は、宗教団体からのしつこい勧誘なんだそうです。福祉系サークルやボランティアグループのふりをしてメンバーを募って、新人が入ったら高額な会費を要求したり、さらなる布教活動を強制させられたり…所謂「偽装サークル」ですね。この問題は全国的に見られるようで、最近は大学側が、新入生ガイダンスで注意を促すことも。苦しい受験勉強の先にある大学生活ですが、実はこうした落とし穴って、少なくないんです。
『最新対応版 大学生が狙われる50の危険』(株式会社三菱総合研究所ほか/青春出版社)は、 大学生活で起こりやすい事故やトラブルと、その対処法を解説した書籍です。制作に当たったのは、三菱系のシンクタンクである株式会社三菱総合研究所。全国220の大学生協が加入し、学生や教職員の生活向上を図る、全国大学生活協同組合連合会。そして、大学生ならお馴染み、学生生活の「もしも」をカバーする「学生総合共済」の元受団体・全国大学生協共済生活協同組合連合会の3団体です。世の中のあれこれに詳しいシンクタンクと、大学生の暮らしをよく知るグループがタッグを組んでの企画ですから、まさに、若者の学生生活を支える選抜チームといえるでしょう。
紹介されている「危険」の例をあげてみますと、ご近所トラブルやSNSの炎上、悪質な訪問販売にアルコール中毒などなど…。本書ではこうしたトラブルに関して、項目ごとに数ページの解説が収録されています。
率直にいえば、テーマごとの知識量はそこまで多くありませんし、ネットで検索すれば、もっとたくさんの情報が出てきます。しかし、本当に急な困りごとが起こって追い詰められた時に、自分で検索して知識を集約し、早急に対応できる人って、一体どのくらいいるでしょうか――情報が絞られているというのは、裏を返せば、要点がぎゅっと凝縮されているということでもあります。クーリング・オフを申し込む際の葉書の書き方や、酔いつぶれてしまった人の介抱の仕方など、今現在のピンチから脱するのに必要な一歩を、具体的に示してくれているのです。
比較的簡単な言葉で書かれていますので、読み疲れることもないでしょう。イメージとしては、大学の気さくで博識な(そして色々と苦労をしてきた)先輩が、一緒にお茶しながら、大学生活のイロハを説いてくれるような感じです。下宿先でのバイトで稼ぎすぎると、実家の税金にも影響することがあるとか、レポートや論文を丸写し(剽窃)してしまったら、どんな大変なことが起こるのかとか…時には生々しい失敗談も交えながら、新入生には想像もつかないような部分までぶっちゃけてくれる、お世話焼きさん的な本なのです。
そんな同書は、大学生は勿論、進学を控えた高校生や、世の中の問題に疎いという自覚をお持ちの社会人の方にもオススメです。また、新たに子どもをひとり暮らしさせる保護者の皆さんも、読んでおいて損はないでしょう。厚みにして1センチくらいの新書で、文字もそれほど詰まっていませんから、速い方なら1時間ちょっとで読めてしまうと思います。
生活上のトラブルによって失うのは、お金だけではありません。貴重や時間や、築いてきた人間関係、そして時には、自らの心もすり減らしてしまいます。リスクを回避するための知識があれば、あなたが被害に遭わずに済みます。そして知識があれば、周りの誰かが揉めごとに巻き込まれてしまった際に、手を差し伸べることもできます。
新生活にふさわしい、“転ばぬ先の杖”的な1冊。身近な人へのプレゼントにもいかがでしょうか。
文=神田はるよ