左遷されたのは無法地帯・墓多(はかた)でした……。地獄のような環境下で働き続ける、ひとりの社畜の物語『社畜!修羅コーサク』

マンガ

公開日:2016/10/8

『社畜!修羅コーサク』(江戸パイン/講談社)

 深夜残業に休日出勤、上司からの理不尽な指示……。それらに耐え、ひたすら会社のために働く「社畜」…。この「社畜」の生き様を見事なギャグへと昇華させ、話題を集めている作品がある。それが『社畜!修羅コーサク』(江戸パイン/講談社)だ。……どこかで聞いたことがあるようなタイトル。これ大丈夫なの? と思いきや、本作の帯では、「本家『島耕作』、弘兼憲史先生黙認!!」と謳われている。

 物語は、図画コーサクが無法の地・墓多(はかた)に左遷されてくるところからスタートする。そこはまるで地獄のような土地。一歩足を踏み入れれば、餓鬼のような物乞いたちが集まり、お金や物を要求される。木々には手榴弾がなっており、女子高生を嫁にもらったサラリーマンは群衆たちによって磔の刑に処されている。……これだけで、常識とはかけ離れた土地だということがわかるだろう。

 そこに現れたのが、土地を牛耳っている様子の「ボス」。モヒカンに金棒という、見た目からしてアレな人物だ。どうやら彼は、コーサクが向かう「墓多死社(はかたししゃ)」の偉い人のよう。そこですかさず、東京銘菓「ぴよこ」を差し出すコーサク。するとボスは、「ぴよこはFuckoka(ふぁっくおか)の冥菓だろォが!」と怒りだし、コーサクに死の一撃をお見舞いしようとする。しかし、そこでコーサクは「社畜お辞儀」を披露し、それを回避。そして、「物凄い社畜が現れた」と、周囲から驚嘆の声が漏れるのである。

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 本作は要するに、サラリーマンが置かれている過酷な状況を地獄絵図のように描写したコメディだ。手がつけられないお局さま、接待での理不尽な要求、やりたくもない宴会芸……。社会人ならば、誰もが似たような状況に直面したことがあるだろう。しかし、本作におけるそれらは、失敗すれば死と隣り合わせという、まさに命をかけたものばかり。そのように次から次へとやって来る窮地を、コーサクは「社畜スキル」を活用し乗り越えていくのだ。

 パッと見は、悪ふざけを暴走させたかのような印象の本作。しかし、根底に漂うのは、身を粉にして働くサラリーマンへの尊敬の念だろう。ただし、人を人とも思わないブラックな環境下で働き続けるのは禁物。コーサクのように華麗な社畜スキルを身に着けていればいいけれど、普通の人は自分の体と相談しながら、働き方を考えましょうね……。

文=五十嵐 大