妻のモラハラで離婚、自殺を意識…東大教授の身体をはった研究成果「自己嫌悪克服法」とは?
更新日:2016/10/31
恋愛が上手くいかない、仕事がしんどくてたまらない、とにかく日々もんもんとして生きづらい。それらの理由はあなたの「自己嫌悪」にあると言われても、すぐに納得できる人は少ないだろう。しかし…実際そうなのだ。
『あなたが生きづら いのは「自己嫌悪」のせいである。 他人に支配されず、自由に生きる技術』(安冨歩/大和出版)は女装でも有名な気鋭の東大教授が、自らの人生をかけて「生きづらさ」に取り組み、その原因と処方箋をまとめた非常に分かりやすい一冊だ。Q&A形式で、興味があるところから読み始めることもできる。
両親との確執に苦しみ、学業や仕事で高い評価を得ても満足感はいっこうに得られない。結婚し子どももできたが、妻のモラハラで離婚。常に自殺を考えるほどの生きづらさを抱えていた著者が、考えに考えてたどり着いたつらさの原因「自己嫌悪」とその克服方法とは!?
自己嫌悪の呪縛を抜け出せば、人生の景色は一変する!
そもそも自己嫌悪は誰にでもある。親が「あなたのためを思って」と躾けることで、子どもの素直な気持ちは抑え込まれ、自分の感情を表現してはいけないと思うようになる。自分が感じたり思ったりしたことは良くないんだ、つまり自分はダメなんだ…。これが自己嫌悪発芽の瞬間だ。そして子どもたちは親が喜ぶ感情や行動を選択するようになり、自分本来の気持ちがどんどん分からなくなる。
この根深い自己嫌悪のため、本音では嫌っている相手を好きだと思いこんで泥沼の恋愛に陥ったり、立場を守るためにやりたくもない仕事を延々続けたりと、心穏やかな幸せからはほど遠い生活を送ることになる。心の奥では真に欲しいものは分かっているのに、自信のなさから本心を封じ込め、欲しいものに手を伸ばせない。これがすべての生きづらさの原因だという。ではどうすればいいのだろう?
著者は「自己嫌悪を克服しようなどと思わないこと」と言う。幼い頃の刷り込みを克服するのは並大抵でないので、その対局にある自分を愛することを勧める。例えば…
○五感にアプローチして頭と身体を接続させる
○直感を大切にし、感動やユーモアで周りの状況を変える
○違和感を覚えたら、立ち止まる勇気を持つ
○したいことをして、流れに身を任せる
少しずつ自愛の回路を開くことで、人生の舵取りができるようになる。著者が誠実なのは、これらすべてを体験し有効性を確認していること。また「理解はできるがそんなことをしたら生活に支障をきたすのではないか」という不安も、論理的に解消している点だ。
先生と対話するように読み、ここは根拠が薄弱では…などとツッコミをいれても楽しい。興味が湧いたら本書のもとになった『生きる技法』(青灯社)もぜひ手にとってほしい。
文=青柳寧子