ノーベル文学賞受賞・ボブ・ディランの名曲絵本も!今話題の「大人の心にしみる大人のための絵本」5選

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/13

 誰しもが子どもの頃に読んだであろう“絵本”。胸をワクワクさせながら次のページをめくったり、誰かが読み聞かせてくれるのを聞いたり。しかし、成長するにつれて「絵本=子どもが読むもの」と思って、疎遠になっている人もいるのでは? また、最近ではこれ本当に子供向けなの? というような、哲学的で内容が深い絵本も少なくない。ここで、今話題の「大人の心にしみる大人のための絵本」5冊を紹介しよう。


ノーベル文学賞受賞! ボブ・ディランの名曲「フォーエバー・ヤング」絵本版!

 今年の「ノーベル文学賞」を受賞したのは、歌手での同賞受賞初となるアメリカのシンガーソングライターボブ・ディラン氏。『はじまりの日』(ポール・ロジャース:イラスト、アーサー・ビナード:訳)は、ディラン氏が息子のジェイコブ・ディランのことを想って作った「FOREVER YOUNG」(1974年発表)をもとに描かれた絵本。

 これまで正式な日本語訳がなかったこの曲を、アメリカ生まれの日本語の詩人アーサー・ビナードが歌える日本語訳にした。音楽とともに歌詞への評価も高いディラン氏の歴史的名曲と絵本の新しい出会いを味わえる絵本だ。

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幻想的な世界観は圧巻! 西野亮廣と33人のイラストレーターによる常識を覆す絵本

 ペン一本で描いたモノクロ絵本『オルゴールワールド』で世界を圧倒した、お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣。絵本作家としての才能を開花させた西野が描いた『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)は、業界の常識を覆す完全分業制によるオールカラー絵本になり、その色彩の豊かさに目が惹かれる。

 4,000メートルの崖に囲まれた、えんとつだらけの町に生まれた人は、青い空を知りやしない。輝く星も知りやしない。頭上にただ煙が漂うだけ。そんな町で、夜空をかける配達屋はうっかりと煙を吸って、配達中の心臓を落としてしまう。その心臓はドクドクとえんとつの町の片隅で、鳴り響き…。

 心温まるゴミ人間と、親を亡くした少年のもとに起こる奇跡の物語にも注目だが、総勢33人のイラストレーター・クリエイターが参加したイラストは圧巻。空想的なえんとつの町も見事に映し出しており、子どもだけでなく大人も惹き込まれること間違いなし。

恋をしている人も、そうでない人も。「すき」という感情が愛しくなる絵本

 可愛らしい女の子の絵が表紙を飾る『すきになったら』(ブロンズ新社)。『ギュスターヴくん』『ふたりのねこ』など、愛らしいネコ絵本でお馴染みのヒグチユウコが、同作では「『すき』っていう気持ちを知ったすべての人」に向けた淡い少女の恋心を紡ぐ。

 おそらく誰もが人を好きになった経験はあるはず。好きだからこそ知りたい、好きだからこそ一緒にいたい…。そんな人を好きになったときの心のゆらぎと変化を、少女のモノローグで語る。いま恋をしている人も、そうでない人も、恋をした瞬間の淡い思い出が甦るはずだ。

あなたなら「死んだあと」どうしたい? ユーモア満載の発想絵本

 しんみりと泣かせてくる絵本はちょっと…という人には発想絵本『このあとどうしちゃおう』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)がおすすめだ。死んだおじいちゃんが残したノートを、ボクが見つけたことから物語はスタート。そこには、おじいちゃんが妄想を膨らませて書いた「死んだあとのこと」が沢山描かれていた。

 「死」という重たいテーマにも関わらず、ヨシタケシンスケのユーモアあふれる発想が満載で、しんみりしすぎない。クスッと笑えてしまうが、同時に自分自身も色々と考えさせられる。子どもと一緒に読みながら、おじいちゃんのように「死んだあとのこと」を考えてみるのもいいかもしれない。

優しいお母さんが鬼のようなお母さんに豹変!? 実話をもとにした衝撃の絵本

 「とても優しかったお母さんが、突然鬼のようになりました」。タイトルからインパクトのある『小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。』(原田剛:著、筒井則行:絵/ワイヤーオレンジ)。実は、今から30年前に徳島県の田舎町で起こった実話をもとにしているという。

 小学生の僕が、豹変した鬼のようなお母さんにひたすらナスビを売りに行かされるという、子どもならトラウマになりそうな話だが、実はとても心温まるストーリー。お母さんはなぜナスビを売りに行かせたのか、親になった今だからこそ、その気持ちに気づけるかもしれない。“草食系”の若者や、すぐ“凹む”若者、“打たれ弱い”若者が多い現代だからこそ、読んでおきたい一冊だ。

 もちろんどの絵本も子どもも楽しめるが、大人になった今だからより楽しめる内容になっている。絵本離れをしていた人は、小説や漫画もいいが、これを機にまた絵本を読み直してみてはいかが?