「親とのさよならの日」がきても後悔しないために。いま、話しておきたいこととは?
更新日:2016/11/7
子どもの頃は、春が来るたびに学年が上がるなど新しいステージの始まりにワクワクドキドキしたものだが、大人になると1年が経ったからといって必ずしも変化があるわけでもなく、年の経過に鈍感になる。しかしながら、確実に歳は取っていくし、それは親も同じだ。
たいてい、親は子どもよりも早く死んでいく。子どもには、親を見送るという試練が生まれながらに与えられているようなものだ。「親とのさよならの日」は、1年後にやってくるかもしれないし、20年後かもしれない。明日の可能性だってある。『親とさよならする前に 親が生きているうちに話しておきたい64のこと』(清水晶子:著、しりあがり寿:イラスト/サンクチュアリ出版)は、親が元気なうちに話しておきたい64の事柄をまとめている。
葬儀社の役員を15年間つとめた著者は、実際に、親の死後に親の銀行口座が凍結されてなかなかお金が引き出せず200万円にものぼる葬式代を肩代わりした、知らされていなかった借金に苦しめられた、など「親と話をしていなかったから」起こった事態やトラブルを多く目の当たりにしてきた。その経験からまとめられた「これらを押さえておけば、親に、自分に後悔しない決断ができるようになる」という64の事柄は、大きく6つの話題に分けられている。
(1)体・心の話
親の健康状態を知ることで、後で「親のことを何も知らなかった」という後悔が少なくなる。
(2)病気・介護の話
病気になる、認知症を発症するのがいつかは予測できない。親の意思を知っておけば、それにそった判断ができるので、迷いも後悔も少なくて済む。
(3)お墓・お葬式の話
明朗会計になってきたとはいえ、まだまだ不透明な部分が多い領域。親が亡くなったときの心の整理をするためにもしておきたい重要な話。
(4)お金の話
「お金の話をするのは、何だか気が重くて…」と思う人は少なくないが、本書によると話さなかったことで損をしたり、苦労したりするほうが大変。
(5)相続の話
親が亡くなったとたんに第三者がやってきて相続権を主張する、仲がよかったはずのきょうだいが「親父は俺にゆずると言っていた」などと言い出すなど、争いごとを生み出しやすい話。
(6)実家の片づけの話
家の規模にもよるが、時間とお金がかかる内容。親がいなくなったら何を捨てるべきか、手元に残すべきか、判断に迷わないためにも話しておきたい。
これらは、いつかは話さなければならない内容だとわかっていても、なかなか切り出しにくい話題だ。本書は、これらの話を切り出すためのポイントを5つ、紹介している。
(1)行事を活用する
こういった話はやはり会って話すのが大切だという。特に実家が遠い人や、訪れるタイミングを逃している人は正月、盆、彼岸、自分の子どもの入学式、七五三、親の長寿の祝い、誕生日、結婚記念日などのイベントを利用するとよさそうだ。
(2)親を取引先だと考える
親が苦手な人、距離がある人ほど、踏み込んだ話がし辛い。「もしかしたら相続で家が手に入るかもしれない」「借金を抱えていることがわかり、それを回避できるかもしれない」など、ドライかもしれないが、いっそのこと親を取引先のような存在だと戦略的に割り切って考えるのも手だという。
(3)月1回は電話をする
特に高齢者の健康状態は1か月で激変する。遠方に暮らす人ほど、月に1回程度は電話をしたほうがよさそうだ。
(4)第三者を例に出す
介護やお金、墓など特にデリケートな話は、急に切り出すと「早く死んでほしいと思っているのか」「お金を狙っているのか」など、誤解を招くことも。「○○ちゃんのお父さん、お墓でもめたらしいよ」などと第三者を例に出すなら、切り出しやすいし親も耳を傾けやすい。
(5)一度に全部解決しようとしない
焦って一度にあれこれ聞いて解決しようとせず、ゆっくりと時間をかけて話していく気持ちが、話を切り出す負担感を減らす。
これでも親に話をし辛いという人は、あえて自分が抱える悩みを親に相談してみてはどうだろうか。例えば、親に自分自身の病気の話を持ちかける。すると、親は“親としての自尊心”が刺激され、自分の健康や病気のことを例に出したりしつつ相談に乗ってくれる。お互いに病気のことを話しやすくなるというのだ。
親がいなくなった後の話を親とすることで、あらためて親と過ごす時間の貴重さが実感できるのもメリットのひとつだと、本書は述べている。
文=ルートつつみ