ピコ太郎「PPAP」人気の理由は? アイドルソングと類似するその中毒性の秘密
公開日:2016/10/18
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— Justin Bieber (@justinbieber) 2016年9月27日
ピコ太郎の動画「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」の勢いが止まらない。ジャスティン・ビーバーが「お気に入りの動画」としてTwitterで紹介してから世界的に人気が爆発。YouTubeの9月30日~10月6日の世界再生数ランキングでトップに躍り出る人気楽曲となった。どうしてここまでこの曲が人気を集めたのだろうか。そこには、アイドルグループの楽曲の特徴との類似性がありそうだ。
「ペンパイナッポーアッポーペン」では、テクノ4つ打ちビートに合わせて小学生でもわかる超簡単な英語の歌が歌われていく。テクノビートの無機質な音質に序盤と終盤にはゲームミュージックのようなデジタルの鮮やかなトッピングを加えている。テクノビートは歌のノリの良さを際立てつつ、決して歌を邪魔しない。音楽プロデューサー・亀田誠治氏の『カメダ式J-POP評論 ヒットの理由』(オリコン・エンタテインメント)では洋楽・邦楽問わず、あらゆる音楽の人気の秘訣を分析しているが、アイドルグループのサウンドについて書かれた項目の特徴とピコ太郎の楽曲は類似している。
アイドルグループでは、ボーカルが複数人いるから、その声を目立たせるため、生演奏ではなく、電子楽器やパソコンで事前に入力した音を鳴らす「打ち込み」を使って、隅々まで音像をコントロールできるようにしている。歌がよく聞こえると、歌詞がよく聞こえ、メッセージ性が増す。アイドルではないが、レディーガガやケイティ・ペリーといったアーティストのトラックが打ち込みなのもその理由。歌詞を際立たせる策として有効であるのだ。
また、ペンパイナッポーアッポーペンには、「弱起」が用いられている。「弱起」とは音楽用語で、メロディーがその小節の1拍目以外から始まること。1拍目を強拍、それ以外は弱拍と呼ばれ、弱拍が束になって強拍に向かう弱起という手法は、聴き手を曲に引き込ませるのに有効で、曲がクセになる。たとえば、AKB48の「ヘビーローテーション」のサビは、強拍を「you」に固定し、簡潔な似た歌詞を何度も繰り返すこと、曲をキャッチーなものにしている。「ペンパイナッポーアッポーペン」でも同様に、名詞に強拍が置いて、それを上手く強調している。「I have a」が弱拍、「pen」が強拍というように似た歌詞をリフレインさせ、決めフレーズ直前、ペンに果物を指すような仕草をしている「Un…」という溜め部分「Pen-Pineapple-Apple-Pen」などの決めフレーズとなる名詞に強拍を置く。この強拍の置き方が、聴き手の印象に残りやすくさせているのだ。
また、アイドルグループの楽曲は“踊れる音楽”でなくてはならない。動きのある音楽は見る人にポジティブなパワーを与える。耳から入る情報だけではなく、目から入る情報もフルに活用することでめくるめくワンダーランドに引き込んでいく。その点も「ペンパイナッポーアッポーペン」は共通している。その振り付けも簡単で真似しやすく、覚えやすい。ヤクザ風強面のおじさんが歌って踊っているという意外性があるのも、動画をついつい見てしまう理由のひとつだろう。
聴覚だけではなく、視覚も刺激する「ペンパイナッポーアッポーペン」。アイドルミュージックと似た中毒性を持つこの曲のブームはまだまだ続きそうだ。
文=アサトーミナミ